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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 4
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ユーバリーのダンジョン 11


 意外と知られていないが、ホタルの幼虫は肉食である。



カワニナなどを食べて育つ。



そして、この世界のファイア・フライは人間や動物の肉を食べるのだ。





この虫の正式名称は別にあるが、『ファイア・フライ』と言えば、



この世界では誰もがこの虫を思い出す。それほど恐れられている。





このファイア・フライはしばらくお腹の発光器が明滅を繰り返したあと、



獲物へ向かって弾丸のような超高速で突撃してくる。



とても虫とは思えない。



オスのファイア・フライはメスにアピールするために光るが、



メスは違う。





『獲物にメスの現在位置を誤認させるために明滅を繰り返す』のだ。





ファイア・フライのメスは頭がキリのように尖っていて、



体が細くて油でヌルヌルしている。



これを利用して、獲物の体に突き刺さると、強力な足で



体内へ侵入してくるのだ。獲物の体に奥深くまで潜り込むと、



首のあたりにあるトゲが『かえし』のようになって取り出せなくなる。





獲物の体から抜けなくなった状態になると、



ファイア・フライは胴体の首に近いあたりから管を伸ばして



自分の頭の先へ硬い卵を産み付ける。



そして、メスは自分の体を蓋の代わりにした状態で死んでしまう。



卵から孵った幼虫は獲物の体内を食い破りながら成長する。








このダンジョンの地下9階では、この恐怖の虫がボスとして



数十匹も出現したのだ。








このボスはジャンジャックとグレゴリオ、



そしてカトゥーにしか倒せない。



念のため『大鉄人』を使ったグレゴリオ。



もう絶対ファイア・フライにはグレゴリオを倒すことは不可能。



バトルアックスを盾のように使い、ロングソードで



超高速の虫をバシバシ叩き落すジャンジャック。





そして、カトゥーは自分のスキル『幻分身』を使った。



このスキルは2体のカトゥーの分身を作り出す。



エンリイの『分身の術』と違い、こちらは実体がない。映像だけ。



だから敵の攻撃は一切受け付けない。もちろん、自分の攻撃も



見た目だけであり、敵にダメージを与えることはできない。





しかし、ただの映像であるため、かなり遠距離でも



自在に動かせる上に、くるくると空中を飛ばすこともできた。



戦争の時など『カトゥーがあっちに!』



『いや、こっちだ!』『カトゥーが空を飛んでる!』など



散々敵をひっかきまわした。



しかも、その中の1人は実体だからたちが悪い。





このスキルを使い、カトゥーはファイア・フライの目標を



分散させたのだ。そしてカトゥー、ジャンジャック、



グレゴリオの3人で確実に叩いて行く。





一方、アントン、ヨー、ベラスコは入り口付近で固まって、



動けなくなっていた。



彼らに超高速で飛んでくるファイア・フライは落とせない。





ファイア・フライはロングソードで叩くには小さすぎる。



カトゥー、ジャンジャックのように正確で素早い剣捌きが必要。



せめて盾があればいいが、フルプレートアーマーを



装備していた彼らは盾を用意していない。



よく誤解されているが、フルプレートアーマー装備は



基本的に盾など装備しない。



『全身を盾にする』・・・フルプレートアーマーは



そういう発想の防具だからだ。



フルプレートアーマーを装備してグレートシールドを



装備するような絵面は、明らかにマンガやゲームの影響だろう。



役割がかぶっていて、無駄である。





フリューテッドタイプ(マクシミリアンタイプともいう)の



鎧が生み出され、腕と肩を完全にカバーできるようになってから、



騎士は盾を基本的には持たなくなった。



フリューテッドタイプの鎧そのものが40キロはあったからだ。



そこへ加えてグレートシールドのような大型の盾など



装備しようものなら・・・。



もし砂地を歩けば、前進するだけで疲労困憊するだろうし、



湿地を歩こうものならずぶずぶと沈んでいって、



まるで動きが取れなくなるだろう。





フリューテッドタイプのフルプレートアーマーは



確かに高い防御力がある。



しかし、『どこへ行くのか』、そして『何と戦うのか』によって



防御力の意味は変わる。



現にベラスコは入り口付近で剣を構えたまま、一歩も動けないでいる。



『無敵』や『最強』は環境や状況によって内容が変わってくるのだ。








カトゥーたちの活躍で、なんとか無傷で



地下9階のボスを全て倒すことができた。



よかった、よかったと言いたい所ではあるが、



アントンたちはすっかり元気が無くなってしまった。



ジャイアント・フロッグ、キラーワスプ、そしてファイア・フライ。



自分たちの武器や力量が全然通じない。





アントンたちが考えていた戦いは『人型のコピーモンスター』や



『大型の獣』ばかりだったのだろう。



ゴブリンウォリアーやグレートホーンを颯爽と倒す・・・



そんなことを夢見ていたはずだ。



しかし、現実は非情だ。小さな虫相手に手も足も出ない。








何時間寝たのか、もうさっぱりわからないが、



とにかくアントンたちは休憩が必要。



そして、休憩の後・・・ついに地下10階がやってくる。





寒い。フルプレートアーマーもチェーンメイルも冷たくて仕方ない。



装着してるだけで体温を奪う。一応防寒具は付けている。



しかし、鎧の冷たさが身に染みた。





一応、まだベラスコは最前列に立とうとした。



だが、地下10階へ下りてついに心が折れた。



『フォーメーションを変える』とカトゥーが宣言した時、



もう誰も反論しなくなっていたのだ。



その原因となったのが地下10階のフロアモンスター・・・。





『ラフィング・モンキー』だ。










(C)雨男 2023/03/19 ALL RIGHTS RESERVED






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