病魔
エミールはまだマーガレットと正式な結婚をしていなかった。
それは第2王子のコルトがまだ結婚していなかったからである。
コルトは女癖が悪く結婚の話があまり出なかった。
そのうえ話が出てもすぐに破談になった。
何しろコルトはすでに私生児が6人もいたからだ。
エミールはコルトが結婚するまで遠慮して待っていたのだ。
とはいえ、エミールはマーガレットと実質結婚しているようなものだった。
誰の目にもそう映っていたし、社交界でもそのように認知されていた。
むしろエミールのほうに『私の娘を側室に』という話が頻繁に来ていた。
まだエミールは正式に結婚していないというのにも関わらず。
第1王子のカイルは結婚していたが、まだ子供はいなかった。
側室の申し込みだけは常に殺到していたが。
そして、この年、思いもよらぬ悲劇が王国を襲う。
秋から初冬にかけて帝国を病魔が駆け巡った。
それは罹患すると高熱になり、咳がとまらず、体が衰弱、
非常に死亡率が高い病気だった。
第1王子がその病魔に捕まった。
宮廷医師と治癒魔術師を総動員して治療にあたったが、無駄な抵抗だった。
元々体が弱いカイルは罹患してたった一週間で天へ旅立った。
国王や医師団、大臣たちは天を仰いで悲嘆にくれた。
皮肉なことにそれをニヤニヤと酒を飲みながら
眺める者がいた。コルトである。
「これで、俺が次期国王だなあ・・・」
(C)雨男 2021/11/07 ALL RIGHTS RESERVED




