金色の魔石
5人で『大富豪』をしながら雑談タイム。
「ねえ、考えてみれば、さっきのボスの構成って、
割とよくできてたように思うんだけど」
エンリイがジャンジャックに尋ねた。
「ん? そーだなー。まあ確かにエンリイの言う通り、
構成自体はよく出来てると思うぜ?
ポイズン・パピヨンを出すことで俺たちを部屋の隅から動けなくして、
そこへ動きの速いゴートヘッドとアーマーウルフ・・・」
「アーマーウルフとゴートヘッドに
『毒の鱗粉』が効かないのはインチキだと思う」
「ははは、幸太郎殿、そうぼやくな。
どれも結局は『ダンジョン・クイーン』が生み出した
コピーモンスターだからな。倒せば全て仲良く『魔石』になるだろう?」
「そういえば、その『魔石』ですけど、
地下11階から一回り大きくなっていませんか?
ご主人様、たくさん『マジックボックス』で吸い込んでいましたよね」
「大きくなってる上に、数が多いから戦闘中は邪魔で危ないよな。
・・・これも『ダンジョン・クイーン』の嫌がらせだろうか?
モコの言う通り、地下11階からは大きなタマネギくらいの
『魔石』が出現するようだな。
ジャンジャック、グレゴリオ殿、この大きな『魔石』は高価なのか?」
「いいや?」
「中型(ニワトリの卵くらい)と同じ価格で買い取られてるぞ」
「え? なんで? この大型のほうが魔力量が多いんじゃないのか?」
「ははは、使い道が少ないのさ。小型(ウズラの卵くらい)の
『魔石』は相場にもよるが、大体銅貨5枚まで。
中型の『魔石』は銅貨15枚くらいまで。
大型は中型と同じ値段で買い取られてる。理由は簡単さ。『灯火』や
『飲料水』程度の魔法だと中型1個でお釣りがくるんだ。
幸太郎殿は『陽光』を持ってるから使うことはなかろうが、
『灯火』の付与されたワンドなら、
中型の『魔石』で2回くらいはチャージできる」
「しかし、『灯火』や『飲料水』、『着火』、『装着』なんかだと
必要な魔力が少ないから、大型の『魔石』を使うと、
使い切れなくて残ってしまうことがほとんどなんだぜ?
まあ、『マジックボックス』があれば保存できるし、
使う頻度にも寄るけどよ。
そして、『魔石』は二週間もすれば煙のように消えてしまう。
もったいないから残った時は近所の人たちでシェアするんだよ」
「ふーん、なるほど・・・。大型の『魔石』が有効なのは、
攻撃魔法か、せいぜい『離脱』の魔法くらいなものってことか。
それで買取価格が中型と同じなんだな・・・」
「あとは市場価格を別に決めるほど、流通量が無いってのもあるけどな」
「あー・・・。それはあるだろうな。
俺も実際に地下11階まで来て、それはよーくわかった。
並みの冒険者じゃ、ここまで到達することさえ難しい上に、
パワーアップ、スピードアップした混成部隊は危険すぎる。
B級冒険者でもいない限り、倒しきれなくて詰むだろう。
安全地帯の階段の側で戦ったとしても、
下手をすれば階段まで戻れずに死ぬ可能性が高い」
「ま、そういうわけで極端に高価なのは
金色の『魔石』だけだぜ? 幸太郎、今日は出たか?」
「ああ、今日は4つ出てる。戦闘中はとにかく邪魔だから、
急いで吸い込んでいたんで気付かなかったけど、
さっき確認したら合計で4つあったよ」
「ほほう、幸太郎殿は、やはり運がいい」
「これ、ジャンジャックとグレゴリオ殿にあげるよ。
俺は使い道が思いつかないからな。あははは」
幸太郎は金色の『魔石』を4つ、テーブルに置いた。
「いいのか? 幸太郎・・・?」
「もちろんさ。そもそもほとんどのコピーモンスターを倒してるのは、
ジャンジャックとグレゴリオ殿だろーが」
ジャンジャックとグレゴリオはお互い顔を見合わせた後、うなずいた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか。
それにしても幸太郎は欲がねえなぁ」
「全くだな。だが、幸太郎殿、これだけもらえれば充分だ。
『マジックボックス』にこれ以上余裕が無いのでな」
「わかった。でも欲しいときは遠慮なく言ってくれ。
何度も繰り返すが、俺には使い道が思いつかないからな」
幸太郎は先ほどステータスウインドウで確認している。
今日だけで大型の『魔石』は合計316個もカウントされているのだ。
ボスのポイズン・パピヨンが100体いたとして、
それを除外しても、このパーティーは地下11階だけで
216体ものコピーモンスターを倒している。
もちろん死体シリーズは別で、だ。
(金色の『魔石』は出現率1%ちょいくらい・・・かな?
でも316体も倒したんなら、
そりゃあ、超レアでも4つも出現するよなあ・・・)
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