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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 3
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冒険者ランクの話 14


 ついに、貴族の子弟が雇った『自称・S級冒険者』は全滅。



全て骸となった。審判席、観覧席の人々は、



その凄まじい殺戮の嵐に声も出ない。





「・・・どうした? 次はてめえらが死ぬ番だ! 


SSS級から順にかかってこい!」





だが、貴族の子弟は誰も試合場へ入ろうとしない。



無理もない、彼らが雇った200人を超える兵士が



30分もたずに物言わぬ死体になるのを見たのだ。



しかも、その雇った兵士たちは全てそれなりの腕自慢だったはずなのに。



逆にトーマスは返り血を浴びてるだけで、傷一つ無い。





「試合場の外で死にたいのか? いいだろう、そこで死ねっ!!」





貴族の子弟たちは限界を迎えた。



みんな悲鳴を上げ、失禁しながら散り散りになって逃げ始めた。





「A級から逃げられるとでも思ったか、笑わせやがる」





追いかけようとするトーマスをアールキン国王が止めた。





「もうよい。トーマス、そなたの無念、そなたの怒り、


友への悲しみ・・・。ここにいる全ての者に伝わった。


もはや、そなたの友の強さを疑う者はおらぬ。


マガークと言ったな。そなたの友、マガークの強さは今ここに証明された。


もう侮る者は二度と現れぬであろう・・・」





普通に制止の言葉をかけていたなら、トーマスは止まらなかっただろう。



それでは怒りの炎は消えはしない。



だが、アールキン国王は怒りの根源を分かち合おうとしたのだ。



この言葉はトーマスに届いた。





「・・・。わかりました・・・陛下の仰せのままに・・・」








『A級冒険者』 VS 『S級以上の冒険者』・・・試合は決着した。



SSS級を名乗る貴族の子弟たちが小便を漏らしながら、



散り散りに逃げ惑った話は、あっという間に



イーナバース地方全域に広まった。しかも相手はA級冒険者たった1人。



赤っ恥もいいところだ。



もうSSS級は愚か者の代名詞となったのである。





そして、この件を受けて、本気で冒険者ランクを



見直そうという動きが広まった。



結局ハッタリだけの冒険者ランクなど、



実戦では百害あって一利無しだったからだ。



冒険者ランクの話は、戦後の諸問題の中では



小さな問題に過ぎなかったが、結果として、予想外に大きな反響となり、



イーナバース地方全域で話し合うこととなった。








結論はあっという間にまとまった。反対意見がほぼゼロになったせいだ。



S級以上のランクは永久に廃止。



ランクはA級、B級、C級とする。



そして、A級は実績のみで昇格を判断。





しかし、これで決定となる前に少し口を挟む者がいた。



アールキン国王である。





「見栄を張りたいという人間の欲望は、無くなりはしないであろう。


例え今は落ち着いていても、100年後、200年後、


またSSS級を復活させようと考える愚か者が現れるかもしれぬ。


それを一度認めれば無意味なランクが、再び際限なく増えていくであろう。


そこで、最初からそのような見栄のための


ランクを作っておけばよかろう」





こうして、『A級、B級、C級』を『B級、C級、D級』と一段階下げ、



名誉だけのランクとしてA級を空けておくことになった。



A級はB級と全く同じ待遇。



しかし、やはり誰もが『A級はB級より上位』という



今までのイメージを消せないので、



見栄っ張りならB級では満足せずにA級を名乗ってしまうだろう。





いわばA級とは『見栄っ張りホイホイ』として機能することとなったのだ。





もちろん現場の冒険者たちはA級でもB級でも気にしない。



待遇が同じならば、どうでもいいのだ。



魔物にランクを名乗ったところで、相手はビビったりしないのだから。





こうしてアールキン国王の意見が入り、



正式に冒険者ランクが作り直された。



A級、B級、C級、D級・・・。



これはイーナバース地方全域で共有され、



次第にこの世界全体へ波及してゆく。



そして面白い事に、ほぼ全ての冒険者ギルドで共通となったせいで、



歴史の経過と共に『公共性』を帯びてゆく一因となったのだ。



もちろん、この時点では誰にも想像がつかないことではあったが。





そして冒険者ギルドが公共的な側面を持つようになると



『非常事態条項』が消えていった。そして各国からも



『中立的な存在』と認識されるようになってゆく。



同時に『冒険者』はどんどん『何でも屋』になっていった。





ギルド・・・つまり本来は『排他的な同業者同士の組合』であるはず。



しかし、奇妙なことに商人ギルドとは反対に、



冒険者ギルドは自由で、公共的な存在になっていったのだ。



皮肉と言えば皮肉な話かもしれない。










(C)雨男 2022/11/30 ALL RIGHTS RESERVED






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