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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 3
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冒険者ランクの話 12


タイガー・グラード・ガンドルフ死去の話は、ゼイルガン王国を震わせた。





これで連合軍に参加した貴族は、ドラッケンを除いて全て死亡したからだ。



アールキン国王など、今まで見せたことのないほどの



狼狽した姿をさらした。そして、涙を流しながら使者に詰め寄り



『嘘だっ』と叫びながら、使者を殴ったほどだった。



もちろん、それは後にも先にもただ一度のこと。



殴られた使者も、国王の気持ちは痛いほど理解できた。



玉座の間にいた全員が涙した。親戚とはいえ、



アールキン国王の友といえたのは、タイガーただ1人だったからだ。








アールキン国王はタイガーの棺を墓地へ運ぶ時、



棺を担ぐ役の最前列右側、ドラッケンの横を誰にも譲らなかった。



自ら担ぐことに固執した。





そして、棺を墓地に埋める時。



棺に土をかけようとする段になって、アールキン国王は



『ま、待てっ!』と叫び、涙を流して動かなくなった。



土をかけたら、本当に死んでしまうような気がしたからだ。



だが、数秒後、うろたえたことを詫びて、自らも棺に土をかけた。



公爵の葬儀は費用を抑えるため非常に簡素なものであった。



しかし、国王自らが汗を流し続けるという、



空前絶後の異例な葬儀となった。








『大暴走』の戦いの後。



ゼイルガン王国の戦後処理はすぐに始まった・・・が、



実は1年近くたった今でも決着していない問題がいくつか存在した。





いくつかの問題の中で最大のものは、



シモンズ辺境伯領、クーガ伯爵領、ジオ男爵領、



この3つの貴族の家系が途絶えたことだった。



厳密に言えば、当然親戚はいる。



しかし、その親戚たち全員が家名を継ぐのをためらったのだ。





当初は欲深く、見栄っ張りな貴族は『私が』、



『いや、我こそが』と牽制し合った。



だが、次第に戦いの全容が見えてくると、全員が尻込みを始めた。



『もし、次があった場合、自分に同じことが出来るのか?』という不安だ。



そして、ガンドルフ公爵死去の悲報が流れると、



戦いに参加した貴族たちは国民から『彼らこそ英雄! 真の貴族だ!』と、



より強く称えられるようになっていく。





結局、親戚縁者は揃って領地と家名を受け継ぐことを嫌がった。



新しく領主になれば、どうしても英雄たちと比べられる。



見栄っ張りであるがゆえに、それに耐えられないと感じたのだ。





最終的に、この英雄たちの領地は王族から



『代理執政官』が4年交代で送られることで決着した。



永久に英雄たちを領主のままとして『長期不在』扱いとし、



王族から『あくまで一時的な代理』として人を送ることになったのである。





領主の椅子は常に空席。あらゆる会議の場でも、



その席に座ることは絶対に、絶対に誰も許されなかった。



そして、次席に代理として王族が座り、舵をとった。



4年交代なのも代理ということを明確にするためだ。





そして、この英雄たちのおかげで、のちに結成される



『イーナバース自由国連合』では、亜人、獣人に対する



偏見は育たなかった。他の地域で人族が勢力を伸ばすと、



次第に偏見が広がっていったこととは対照的だ。








他に片付かない問題として、冒険者ランクの話があった。



これは先ほどの英雄たちの領地に比べれば、小さな問題ではある。



ところが小さな問題のわりに、議論は紆余曲折を経て、



決まりかけては白紙に戻ることを繰り返した。



時間ばかりが過ぎて、全く決着する気配が無い。



これは、ピグモン辺境伯がゼイルガン王国に加入して、



あっさりそのまま王国最北端の守りに就いたこととは正反対である。








戦いの全容がハッキリするにつれ、S級以上の冒険者がやり玉にあがった。



全く戦列を維持できず、初っ端から乱戦になってしまったのは、



明らかにS級以上の冒険者があっさり負けて、足を引っ張ったからだ。





しかしS級以上の冒険者は、ほぼ全員貴族の子弟。



親の貴族たちは必死に擁護した。



自分の子供が戦いに参加して死亡。その上、集中砲火で責められては、



擁護したくなる気持ちもわからないではない。



おまけにS級以上の冒険者はゼロになったわけではないのだ。



というより、諸侯の領地にまだたくさんいるし、



何より他国の冒険者ギルドにもうじゃうじゃいる。





『S級以上の冒険者だけに責任を被せるのは間違っている』





そんな声が次第に大きくなっていった。








ところが、今度はガンドルフ公爵が死んだというニュースが



飛び込んで来ると、風向きは逆になった。



アールキン国王が直々に議論に首を突っ込んんできたのだ。










(C)雨男 2022/11/26 ALL RIGHTS RESERVED






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