3人の王子
それはこの土地を領土にしている『バルド王国』の
後継者争いに起因する悲劇だった。
何年前かはもうはっきりしない。
死んだカルタスには正確に何年たったのか知る術が無いからだ。
カルタスは王国の第3王子エミールの警護の役職についていた。
カルタスは平民の出身だったが王国で10指に入る剣の使い手として
ナイトの叙勲を受けて警護に抜擢されたのだ。
エミールには二人の兄がいた。
第1王子カイルは病弱で体は弱かったが、非常に聡明で
町に教会主催の平民向け学校を設立するなど、すでに将来の『賢王』と
呼び声が高かった。平凡な才能しかなかった国王は
第1王子をとても気に入っていた。
第2王子コルトは、同じ両親から生まれたとは思えないほどの愚鈍な男だった。
彼は女と酒にしか興味がなく、わずか15歳にして
首都ダブリンの娼婦街の常連、上得意になっていた。
エミールは王位継承権は3位だが側室の子であり、
早々に王位に興味が無いことを明言していた。エミールはカイルに懐いており、
ずっとカイルの役に立つ存在になることを目指していた。
エミールは家庭教師をいやがり、あえてカイルが作った
教会の学校へ通っていたほどだった。
学校の状況や改善点をカイルに伝えるためだ。
その教会の学校でエミールは一人の女性と出会う。
エミールと同じ年のその女性の名前はマーガレットといった。
エミールが16歳の時、突然マーガレットとの婚約の許可を国王に願い出た。
少しずつ、運命の輪が回りだした。
(C)雨男 2021/11/04 ALL RIGHTS RESERVED




