カルタスと4人の騎士
幸太郎はよろよろと歩くガイコツ騎士4人を見た。
彼らは幸太郎にも興味を示さず、よろよろと歩き、時々思い出したように
のろのろと剣を振り上げ、力なく振り下ろした。そしてまた向きを変えると
よろよろと歩く。それをこの周辺でずっと繰り返している。
「カルタス殿、あちらの4名はまだ戦っているのですね」
「彼らは私の部下だった者たちです。死んだときの無念に囚われ、
何処までが自分の妄想で、どこからが現実かわからなくなっているのです。
もはや自分の名前さえわからなくなっているようで、呼びかけにも
答えなくなりました。もう正気を失っております」
「しかし、カルタス殿は正気を保っておられる。カルタス殿は
もしかしたら自力で冥界へ戻ることができるのではありませんか?」
「はい。私は戻ろうと思えば冥界へ戻ることができると思います。
しかし・・・この4人が不憫でならず、見捨てることができなくて
ずっとここに留まっているのです」
カルタスは幸太郎へ向き直ると頭を下げた。
「幸太郎様。太陽神さまの使命を帯びたあなた様がここへこられたのも
何かの天啓と思います。どうか、我らを冥界へ送っていただけないでしょうか?」
「もとより、そのつもりです。ご安心下さい、カルタス殿」
カルタスはこの森であった事件を語りだした。
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