町は北西
幸太郎は自分が異世界から来た話、ここまで来た経緯を全てカルタスに話した。
「なんと・・・。地上に増えすぎた迷える者たちを冥界へ帰すお役目を・・・」
「まだこちらの世界へ来て二日目なんですけどね。しかし、いきなり森へ
入ったのは軽率でした。すっかり迷ってしまって・・・。お腹もすきましたし」
「左様ですか。今やこの森には人が立ち入らないようになってしまった様子。
私が生きていたころはこの森にも小さな街道がありましたが・・・
町までゆかれたほうがいいでしょう。実はこの森はさほど大きくありません。
どちらへ向かっても、まっすぐ進めば2時間もあれば
森の外へでることができます」
「ここから一番近い町はわかりますか?」
「私が死んでから十年以上たっているはずですから、
小さな村は無くなっている可能性もあります。
やはり海沿いの大きな町へゆくのが良いでしょう。
ここから北西に進めば『中継都市コナ』があります。しかし、
北西へ直線で進むより、一度西へ進み、街道へ出た後、北へ進んだほうが
迷わないし、早いはずです。明日の朝から歩けば
次の日の昼には到着すると思います」
「おお、それはありがたい情報です!」
「そうだ。町へゆくのでしたら、お金が必要でしょう。たしか、そちらの
木の根元に戦いのさなか散らばったお金があったはず。お持ちください。
どうせ我らには使うことはできないものです」
カルタスは近くの木の根元を指さした。幸太郎が探してみると金貨が3枚、
銀貨が6枚、銅貨が4枚見つかった。価値はわからないが、これで
食事ができないってことはないだろう。『洗浄』でピカピカになった。
「ありがたく使わせていただきます。ところで・・・さっき『戦いのさなか』と
言いましたね? あちらの4人もそうですが・・・差し支えなければ
事情を聞かせてもらえませんか?」
(C)雨男 2021/11/04 ALL RIGHTS RESERVED




