姓があると貴族?
「姓をお持ちですか。では貴族のお方ですね。失礼いたしました。」
「いえ、そのような大層なものではありません。
ランドール卿こそ貴族の方とお見受けいたしますが」
姓があると貴族? ますます中世ヨーロッパみたいだと幸太郎は思った。
日本は江戸時代でも庶民は姓を持っていた。基本的には貴族か武士、
土地を持つもの以外は使っていなかっただけだ。つまり、この世界は
日本よりヨーロッパに近い文化形態を持っているということになる。
姓と言う概念を持たない民族も、地球同様にいるかもしれない。
彼らに日本の文化に合わせろと言うと、大変なことになるだろう。
「いやいや、私こそ『卿』を付けるのはおやめください。騎士爵を持っては
おりますが、元々私は平民の出なのです。剣術大会で優勝した結果、
ナイトの叙勲を受けただけなのです。私のことはカルタスとお呼び下さい」
「さようですか・・・ではカルタス殿と呼ばせていただきます」
「ご厚意に感謝いたします、幸太郎様」
「いえ、『様』をつけられるとこちらが恐縮です」
「いえ、幸太郎様と呼ばせていただきます。謙遜なさっておいでですが
あなた様の言葉使いは明らかに平民とは違います。高い教育を受けた証拠です。
それに、その変わった意匠の服も、とうてい平民の持ち物ではありますまい」
幸太郎はここで初めて自分が背広に革靴というのを思い出した。
誰にも会わないから気にならなかったのだ。
「しかし、幸太郎様はなにゆえ、このような場所にお一人で?
そちらのゾンビは幸太郎様に従っておるのですか?」
うん、そりゃあ不審だよなあ。幸太郎はまず自分のことを説明することにした。
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