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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 2
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異世界の将棋


 この『盤兵遊』は9×9マス。将棋と同じ広さ。



コマも将棋やチェスに似ている。だが、全然違う部分もある。





まず、『弓兵士』と『魔導士』というコマがあるのだ。



弓兵士は自分のマスから上下左右(斜めはダメ)



3マス離れた敵のコマへ攻撃ができる。自分は動かないので



攻撃ターンが終了するとコマを裏返す。



そして次の攻撃ターンは移動しかできない。移動も将棋の『歩』のように



直進しかできないわけでなく、上下左右に1マス移動できる。



その他の普通のコマのように移動して敵のコマを取ることも可能。



さらに次の攻撃ターンになれば、再びコマを表にして



弓矢の攻撃ができるようになる。





『魔導士』のコマも奇妙なコマだ。



将棋の『王将』と同じ動きができるが、なんとこのコマは



敵のコマを移動して取ることができない。



わかりやすく言えば、接近戦ができないコマというわけだ。



その代わり、自分の上下左右、そして斜め方向に2マス、3マス離れている



敵のコマを攻撃できる。弓兵士と同様に攻撃するとコマを裏返す。



そして次の攻撃ターンは移動しかできないのも同じ。





『弓兵士』、『魔導士』両方とも敵のコマを飛び越えて



『キング』を攻撃できるので将棋で言う『桂馬』に似たものがある。



基本的には防御に優れたコマだと言える。



移動せずに敵を迎撃できるからだ。





チェスに似てる部分は、取られたコマ、死んだコマは、



持ち駒にならないという部分だ。





将棋に似てる部分は『突撃兵』(将棋の香車に似てる)や



『歩兵』(将棋の歩と同じ)が敵陣へ入ると、前進以外に



上下左右に1マスずつ動けるようになる『成り』があること。





しかし、この『盤兵遊』が将棋やチェスより複雑なのは間違いない。



と、いうのも、このゲームでは最初に6枚(3種類、各2枚)の



持ち駒があることだ。つまり援軍や伏兵という概念が入っている。



そして、それはゲームスタート時点では自軍の陣地、将棋と同じ



手前3×9マスにしか打つことができない。



しかし、自軍のコマが敵陣に3コマ以上侵入すると



真ん中の3×9マスにも打てるようになる。



自分は打てる、相手は打てない。



これは自軍優勢という概念が入っているのだろう。



しかし、これは悩む。そこまで援軍を温存するべきなのか?



さっさと援軍を投入して自軍を強化するべきなのか? 



弓兵士や魔導士で防御重視の戦いが有利なのか? 



敵陣に味方を突入させて中盤も支配するべきなのか?





そして、さらにこのゲームを複雑にする要因がある。3つも。



1つ目。なんと『キング』の位置を最前列の『歩兵』以外、



どこでも自由に入れ替えることができるのだ。



やろうと思えば最初から将棋で言う『穴熊』の位置、



盤面の角に置くことも可能。



『キング』を置かないというのは、もちろん反則。





2つ目。これもビックリ。持ち駒6枚を初期配置の『キング』以外と



入れ替え可能。『歩兵』の位置に配置もできる。



ただし、それをすると開幕すぐに、そのコマが落とされる可能性も増える。



『弓兵士』や『魔導士』を持ち駒に温存して、



必要な場面で投入という戦法も人気らしい。



このゲームではまず相手の援軍・・・6枚の持ち駒が何か、



というのを確認するのがセオリーだという。





3つ目。幸太郎はこれが一番驚きだった。



ゲーム開始前に盤面中央にタオルなどで、お互いの陣地が見えない様に



『衝立』を作り、相手が自軍にどんな工夫をしているのか



『見えない』ようにするというのだ。相手がどんな布陣をしているのか、



衝立を開けてみるまで、わからない。








「だから、開けてビックリさ。『キング』を一番端っこに寄せておいたら、


相手がその正面に戦力集中、一点突破の布陣を敷いていて、


自軍の大半が何もしないうちに『キング』があっという間に陥落・・・


なんてことも起きるんだ。ここは完全に読み合いだぜ?


ゲーム上級者でも素人の『破れかぶれ』に負けることは珍しくねえ」





「まあ、基本的にはまず防御を考える布陣が無難だな。


極端な布陣は当たれば一気に勝負を決定するが、


外れれば目も当てられん。幸太郎殿もどうだ? やってみるか?」





「いいや、俺はこの手のゲームは苦手なんだ。いや、本当だよ。


故郷に似たゲームがあるが、ろくに勝った記憶が無い」





「そうなのか? 幸太郎は、得意そうな感じがするけどよ」





「俺は見てるだけの方が楽しいな。しばらく見てていいか? 


俺はその後、少し寝るつもりだから」





幸太郎は嘘を言っていない。確かに幸太郎は将棋やチェスが苦手だ。



もっと言えばオセロも弱い。



なぜかはわからないが、どうにもコマの扱いが下手なのだ。



それこそ、かの将棋超人・藤井聡太などと戦えば飛車角落としに、



金と銀を落としてもらっても負けてしまうのではなかろうか。








ジャンジャックとグレゴリオが対戦する『盤兵遊』を、



幸太郎、モコ、エンリイの3人で見ていた。



なんかダンジョンの中とは思えない平和な光景である。





ゴトクにかけたヤカンがしゅんしゅんと音を立てていた。










(C)雨男 2022/08/26 ALL RIGHTS RESERVED






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