表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 2
549/1073

地下3階までだ


 ダークエルフの調査隊の地図のおかげで、



落とし穴の位置はわかっている。





「ここだぜ。えーと・・・これがスイッチだな。モコ、どこまで穴が空く?」





「空気の音からすると・・・そのスイッチを中心にして・・・


ここまで切れ目があります」





「うーん。見ても全然わからん。モコの耳はすごいな・・・。


じゃあ、エンリイ、頼めるか?」





「オッケー、幸太郎サン」





みんなで一緒に落とし穴の外側まで下がる。



念のため、余裕をもって離れた。エンリイが棍を伸ばして、



スイッチを叩く。すると『ゴゴッ』というわずかな音と共に、



石のブロックの床が下に向かって両開きで口を開けた。





『パカン』という音がしそうなほど、きれいに、



そしてスムーズに穴が開く。幸太郎は感心した。





「へぇ~~~。こいつはきれいに穴が空くもんだ・・・。


上にいたら、まず落っこちるだろうなぁ・・・。


床は触っても石にしか見えんというのに、なんて滑らかな動き。


可動部品とかどうなってんだろう・・・」





「幸太郎は変なトコに感動するんだな・・・。


お前も充分『変人』だぜ。やっぱりB級冒険者の


資格充分だぜ? あははは」





「お前だってB級冒険者だから『変人』なんだろうが・・・」





幸太郎は日本人なので、どうしてもアレコレ珍しいのだ。



ユーチューブに動画をアップしたいが、



残念ながらネット環境は別の宇宙にまでは繋がっていない。おしい。





幸太郎はしげしげと落とし穴を見た。



穴の大きさは、長さ4メートルくらい。



深さは地下2階までなので、これも4メートルくらい。



つまり床の厚さは1メートルくらいあるわけだ。



幸太郎は『マジックボックス』からハシゴを取り出した。



ジョイント式なので繋ぐと充分下まで届く。





「モコ、下から音は聞こえるか?」





「ちょっと待ってください、ご主人様・・・」





モコがしばらく耳をすませる。





「・・・コピーモンスターの音はしません・・・。


が、ハシゴと反対側の遠くで、わずかに剣の音がします。


おそらくロイコークどもでしょう。


距離は40メートル以上離れているので正確な位置はわかりません」





ジャンジャックがうなずいた。『よし、降りようぜ』。



ジャンジャックを先頭に降りてゆく。エンリイがしんがり。



これには理由があった。エンリイは梯子を使わない。



なんと棍を伸ばして消防隊の緊急出動のように滑り降りてきた。



早い。ワンダバダー。





「よし、この調子で一気に地下5階まで降りよう」





幸太郎が提案したが、全員に反対されてしまった。





「幸太郎・・・地下3階までだぜ」





「うむ、地下3階までだな」





「ご主人様、地下3階までにしときましょう!」





「えへへ、幸太郎サン、順番はボクからだよ!」





ガクッ





「あー・・・。うん、そう、だったね・・・。そういえば・・・」





全員、ポイズン・パピヨンの射的ゲームを楽しみにしていたのだ。



バリア係の幸太郎はすっかり忘れていた。



しかし、ここで幸太郎の脳に閃きが電気のように走った。





(・・・? そうだ、地下3階で正解だ! 


それ以上はダメだ。危険すぎる・・・)





幸太郎が、何に気が付いたのか? 



それは落とし穴の『もう1つの意味』である。





(この落とし穴・・・性格わるいな・・・。


長さが4メートルなら、俺たちのパーティーだと


全員落ちるとは限らないわけだ。


普通にフォーメーションで歩いていたら、最前列または


最後尾が落ちないで、取り残される可能性が高い・・・。


しかも、穴が開く前に『ゴゴッ』って音がした。


もし、普通にスイッチを踏んでしまったら、


おそらくモコは音に反応して飛び退ける。


そして俺は間違いなく落ちる。


つまり、この落とし穴の『真の罠』は・・・パーティーの分断なんだ! 


多分、調子に乗って『落とし穴ショートカット』を使っていたら、


下の階層のどこかで、全員が降りる前に穴が閉まるという


事態が起きるはず・・・。


ジャンジャックは『人が見てると穴は塞がらない』と言ってたが、


それが絶対大丈夫という『保証』は無い。


ここの『ダンジョン・クイーン』は深層部で必ず仕掛けてくるだろう。


俺たちが油断するのを見計らって・・・)





地下3階なら、最悪、幸太郎だけが分断されても全く平気。



余裕でみんなが正規ルートで降りてくるのを待てる。



しかし、地下6階以降でパーティーが分断されたら



誰か死ぬかもしれないのだ。



落とし穴ショートカットはロイコークたちの回避だけにして、



後は全員で正規ルートを行くべきだろう。



幸太郎は今浮かんだ考えを全員に説明した。





「・・・ありえる・・・な。確かに、


『人が見ていると落とし穴は塞がらない』ってのは


文献にも載ってる・・・が、絶対そうだって保証はどこにもねえ・・・」





「言われてみれば、確かに。幸太郎殿の言う通り、


このパーティーを倒す確実な方法と言えば、パーティーの分断だな。


それも、一番危険なのは幸太郎殿をパーティーから


切り離されてしまうことだ。


それだけで食料などの補給物資と回復魔法が無くなってしまう」





「私はご主人様を孤立などさせません。どこまでもついて行きます」





「うん、ボクもそのつもりだよ。


でも、幸太郎サンの心配は正解ど真ん中だと思う。


これはちょっと考えてなかったね。


なまじダンジョンに潜った経験があるからこそ、思いつかない罠だよ。


人が見てても閉まる・・・か。


実際にやられたら絶対に引っかかっただろうね。


それにしても、これを見抜く幸太郎サンって・・・。


ますます興味が湧いてきたよ」





「なんか・・・ご主人様と『ダンジョン・クイーン』の


知恵比べみたいな様相を呈してきましたね・・・。


私たちも注意しないと、足元をすくわれそうです」





「モコの言う通りだぜ。小細工されないためにも、


できる限り正規ルートで地道に進んだほうがいいだろうな」





幸太郎たちは落とし穴ショートカットを使い、



地下3階まで降りた。ロイコークたちさえ回避できればいい。



ここからはもうハシゴは使わない。










(C)雨男 2022/08/10 ALL RIGHTS RESERVED






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ