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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊
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地下5階へ 10


いよいよ地下5階へ侵入。





幸太郎は殺虫剤をしまって、ラウンドシールドを構える



最初のフォーメーションになっている。



ジャンジャックとグレゴリオが『こっちは任せろ』というので、



後方にだけゾンビを2体配置。後ろから現れた場合の囮である。





このフロアーの問題点は『地図が無い』ということ。



ボス部屋の場所もわからないし、罠なども全くわからない。



手探り状態なのだ。





「ま、とりあえず、適当に歩いてみようぜ。手がかりはないんだからな」





ジャンジャックは涼しい顔だ。幸太郎は『時計塔』の目印と



『陽光』の設置に注意することにした。





「前方、ファングベアー2体。接近中」





モコが警告を出す。モコの『ソナー』は本当にありがたい。



ジャックとグレゴリオは、それぞれ武器と盾を構えた。



前方の曲がり角から熊が2体、姿を現す。やっぱりでかい。





熊は4つ足で走ってきた。重量感がすごい。



幸太郎はラウンドシールドのグリップをしっかり握って構えた。



モコが幸太郎の前に陣取る。





グレゴリオがタワーシールドを構えて、ファングベアーの突進を受け止めた。



いや・・・



『吹っ飛ばした』・・・。なんと受け止めるどころか、完全に跳ね返したのだ。



ファングベアーはゴロゴロと後方へ転がっている。ちょっとかわいい。





ジャンジャックはもうファングベアーを倒していた。



突進するファングベアーにカウンターを合わせるように



バトルアックスを叩き込む。『ボキッ』という嫌な音と共に、



ファングベアーの頭が真っ二つに割れて、力を失った体が石畳を滑る。



ジャンジャックは足で無造作に受け止めた。





「おっとっと」





ジャンジャックは全くの余裕だ。



ファングベアーの動きが止まると同時に『魔石』に変わった。



グレゴリオのほうもあっけなく終わり。



立ち上がったファングベアーの頭をグレゴリオは金棒で垂直に叩いた。



なんかグロい光景。ファングベアーの頭は胸のあたりまでめり込み、



前足が力なく2,3回空を泳いだあと、倒れながら『魔石』になった。





「・・・。野生と違って、やっぱりイマイチ軽いな。頭も柔らかいし・・・」





グレゴリオは幸太郎に理解できないお気持ちを述べられた。








2人は『任せろ』と言ったものの、相手は2メートル越えの熊だ。



正直、幸太郎はゴーストでのかく乱やスケルトンなどの援軍を考えていた。



倒すのに時間がかかり、挟み撃ちに合えば、危険は今までの



比ではないはずなのだから。



しかし、まさか2人とも一撃で熊を殺してしまうとは。





(これがB級冒険者の力か・・・。なんてパワーだ・・・)





幸太郎がドン引きしていると、モコが新たな警告を出す。





「後方、階段前右側より、1体接近中」





「お! 早速ボクも出番だね。幸太郎サン、ゾンビは足止めに


専念してもらえば大丈夫だよ!」





エンリイもケロっと言った。幸太郎はとりあえず言われた通りにする。



正直なところ、こんな細身の女性に熊が殺せるのだろうか? 



と不安は消えない。だが、仲間を信頼しなくては始まらない。



自分一人で最下層まで行くことは不可能なのだから。





ファングベアーが走ってくる。まずはゾンビに向かって前足を



叩き込むつもりなのだろう。



しかし、ファングベアーはそこで止まった。



エンリイが鋭くファングベアーの鼻を突いたのだ。



ビリヤードのように正確なショット。



エンリイの棍の腕前も、やはり一流だ。





ファングベアーは鼻を抑えてひるんだ。そこへエンリイは



がら空きの眉間へ鋭い突きを放つ。



『ゴンッ』という鈍い音。だが、熊の頭蓋骨は頑丈だ。



ファングベアーは立ち上がって顔への攻撃を嫌った。



エンリイは待ってましたと言わんばかりに、上体を後ろへねじる。





「伸びろっ!!」





エンリイの長い足の踏み込みと同時に、疾風のような鋭い突きが



ファングベアーの喉へ突き刺さった。『ボキッ』という音が響く。



ファングベアーの喉がつぶれ、おそらく骨も折れたのだろう。



ファングベアーは一歩、二歩、と下がったところで、



ゆっくり倒れて『魔石』になった。





「うへ・・・。強いな、エンリイ・・・」





幸太郎が半開きの口で、ひねりの無い感想を言った。





「ボクだって熊くらい倒せるよ! 囮のゾンビのおかげで先手も取れるし」





『熊くらい』? 細身の女性の言うセリフじゃないなあ、と



幸太郎は変なところに注目する。





「私、場合によっては後ろに回り込んだりするつもりだったけど


・・・必要なさそうね・・・」





「心配しなくていいよ、モコ。ボクだってC級だもん。


2体までならゾンビのサポートで充分勝てると思うよ」





このエンリイのセリフは虚勢ではなかった。



この後、ファングベアーに後方から襲われた時には



ファングベアーの両眼を潰し、空中へフワリとジャンプすると



天井と壁に『着地』して延髄へ強烈な突きを叩き込んだ。



延髄を折られたファングベアーは、地面に崩れ落ちたあと『魔石』になった。








ジャンジャックとグレゴリオはファングベアーを問題にしない。



エンリイも強い。地下4階と打って変わって、



今度は幸太郎とモコの出番が無かった。





おかげでスイスイ進む。そして、モコの『ソナー』も大活躍。



『落とし穴』も『モンスター部屋』もモコには『聞こえる』のだ。



落とし穴は見た目、全然わからない。だが、通路の壁との境目だけは



裂け目があるようで、微かに音がするのだという。



幸太郎も、ジャンジャックとグレゴリオも、もちろんエンリイもわからない。



わかるのは『これ、たぶんスイッチだ』という、盛り上がった



ブロックだけ。当然、罠は全て回避。



あとはボス部屋を探して、歩き回るだけである。








幸太郎の設置した『時計塔』と『陽光』のせいで、探索も楽に進む。



とにかく『陽光』があれば通路を明るく照らしているために、



見た目で『一度通った』ことが丸わかり。薄暗いほうへ



進めばいいのだ。『陽光』の無いほうが未探索なのだから。








「おー。あったあった。両開きの扉。ここが地下5階のボスだな。


どうやら、階段を下りて、右側の方向だな。憶えておこう。


幸太郎、準備はいいか? とりあえず、中へ入ったら右隅へ移動。


まずは防御優先だぜ? さぁて、鬼が出るか蛇が出るか・・・。開けるぞ」





ジャンジャックが扉の取っ手に手をかけた。










(C)雨男 2022/07/02 ALL RIGHTS RESERVED






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