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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊
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地下5階へ 3


 ボス部屋に到着するまでに、さらに6回ほど



グリーンキャタピラーに遭遇した。だが、コボルドと同じく、



何の意味も無かった。このパーティーには傷一つ付けられない。





しかし、幸太郎は少しだけ気になった。





「なあ、ジャンジャック。コピーモンスターの数・・・


密度が増えてる気がするんだけど」





「それはあるかもしれないな。なにせ、このダンジョンに潜っているのは、


現在俺たちとロイコークたちだけだろうからな。


『ダンジョン・クイーン』も当然、俺たちに注目するだろ」





「ああ・・・。なるほど。知的生命体なら、


当然、深層を目指す奴らに目が向くってわけか」





「幸太郎殿、これは地下11階以降へ行くときは、


必ずついて回る現象だ。ダンジョン破壊をするときは、


どうしても地下11階へ突入する予定日以降は、


誰もダンジョンへ入らないようにする必要があるからな。


ダンジョンに潜っているのは自分たちだけ、という状況は絶対に発生する。


すると、嫌でもコピーモンスターは集中して発生するんだ。


『金色の魔石』狙いの時より、明らかに数と密度は上昇するな」





「ジャンジャックとグレゴリオ殿は、その状態でも


地下18階まで行ったのか・・・。凄まじい力だな。


B級冒険者ってのは超人みたいだ」





「でもB級以上は超人ってより変人ばっかだぜ? それに、幸太郎。


お前だって充分B級以上って言えるだろ。


エルロー辺境伯を倒して、ダンジョン攻略に便利な能力満載、


それに充分『変人』だしな」





「よしてくれよ、ジャンジャック・・・。


俺はごくごく平凡な一般人だってのに・・・」





「ボクも幸太郎サンは充分『変人』だと思うよ? 


こんな『お人よし』は滅多にいないもん」





幸太郎以外が全員笑った。





「それにご主人様は『黒フードのネクロマンサー』と


『荒野の聖者』という2つの異名を持ってます! 


B級以上でも不思議ではありません!」





「う・・・。それを言わないでくれ、モコ・・・。


欲しくてついたあだ名じゃないんだからさ・・・」





またも、幸太郎以外が全員笑った。








考えてみれば、おかしな『異名』が付いたものだ、と幸太郎は思った。



どちらも本人の望んだものではない。勝手に周囲が付けた異名だ。



だが、『異名』なんてものは、得てして



こんな感じで勝手につくものなのかもしれない。








このパーティーの雰囲気はゆるゆるだ。とにかく強い。



貧弱なのは幸太郎だけ。はっきり言えば、



幸太郎はこのパーティーの誰にも腕相撲で勝てないだろう。



幸太郎はすでに、元の日本で『人並み以上の運動能力はあった』という



プライドは捨てている。いや、捨てきれてはいないが、



現実問題として、おそらくモコにも組み伏せられてしまうだろう、



ということは否定できない。








「さて、着いたぜ。地下3階のボス部屋だ。


ダークエルフたちの調査では、ここのボスは


『ポイズン・パピヨン』とある。作戦を立てよう。ここは幸太郎に任せるぜ?」





「その『ポイズン・パピヨン』ってどんな奴なんだ?」





「この『ポイズン・パピヨン』って奴は、攻撃力は無いんだ。全く。


その代わり毒の鱗粉をまき散らして、獲物が動けなくなったら


卵を産み付けるのさ」





「うげえ・・・。やだなあ」





「まあコピーモンスターだから、卵は産み付けられないけどな。


こいつは大きさは30センチくらい。動きもそれなりに速い。


何より飛んでる敵だから、ハンマーや斧では落としにくいんだ。


それがおそらく20匹以上出現すると思う。


キーテたちも解毒のポーションをたくさん使って


倒しているみたいだな。毒が回って歩けなくなったら、


その後10分くらいで意識が無くなるはずだから厄介だ。


解毒ポーションが用意してなかったら詰みだろうぜ」





「そうか・・・。それで俺の出番か。確かに毒は


『陽光の癒し』で全て無効にできるし、


毒の鱗粉そのものも『破魔の陽光』で煙と同じように吹き払えるはず」





「そういうことだ。つまりここのボスは幸太郎がいる限り、


絶対に負けることがないってことさ。


そもそも幸太郎には『状態異常無効』があるから、


ここで昼寝しても平気だぜ?」





「それに、幸太郎殿が昨日作っていた『殺虫剤』と『水鉄砲』・・・。


おそらく『ポイズン・パピヨン』に一番最適な武器はそれだろう。


キーテたちは弓で狙撃していたようだが、苦戦は免れなかったはずだ」





「ああ、なるほど・・・。それは確かに。


剣で斬ろうと『ポイズン・パピヨン』を追いかけると、


より間近で毒の鱗粉を吸い込むことになる。


相手は飛んでるし、速いから走って追いかけると


どんどん息があがる・・・。


普通に近接攻撃で倒そうとすると、相手の思う壺ってことか」





「だから、ここのボスは『飛び道具』の用意が無いとキツイ。


解毒のポーションが無くても詰んでしまう。


『ポイズン・パピヨン』は近接攻撃の手段を持ってないから、


絶対近寄って来ない。用意が悪い冒険者はここで脱落するボスだな。


手探りでちゃんと突破してるキーテたちは大したものだぜ」








『それでも突破できなかった地下5階のボスはどんな奴なんだろう?』



幸太郎は少し不安になった。キーテはやはり優秀らしい。



用意も良かったはず。



まさか『全滅』の原因はその地下5階のボスではなかろうか? 



しかし、考えてもどうしようもない。情報が無いのだから。



『手探り』になる地下5階からは慎重を期すべき・・・それしかないのだ。










(C)雨男 2022/06/22 ALL RIGHTS RESERVED






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