意外と賢いゾンビちゃん
幸太郎は2体目のゾンビを呼んだ。
ここでグレイウルフは退却して、夜の闇に消えていった。
「勝ったのかな? シェルターとゾンビのおかげだな・・・」
血の匂いと内臓の匂いがひどい。ほっとくと他の獣を
呼び寄せてしまいそうな気がした。
寝るのにもちょっと困る。幸太郎はゾンビに命令を出した。
「この狼の死体をどこかに捨ててきてくれ」
さあ、どうだろう? 幸太郎はゾンビの行動に注目した。
ゾンビはグレイウルフの死体二つを抱えると歩き出した。
そのまま夜の闇に消えていく。
(え? あれ? どこまで行くのかな? 呼び戻したほうがいいかな?
・・・いや、まずは結果を知っておいたほうがいいな。
帰ってくるだろうか?)
およそ5分後。ゾンビは帰ってきた。良かった。
(5分・・・。単純に考えて片道2分30秒ほど歩いてから、
捨ててきたわけだ。これは驚きだ。『どこか』と曖昧な命令をしたのに
ゾンビは『寝るとき匂いが邪魔』という俺の悩みに忖度したわけか。
しかもかなり遠くまで出かけたのにちゃんと帰ってきた。
・・・つまり、命令を遂行するためにかなり自立した行動がとれるのか・・・)
幸太郎はアステラの言葉を思い出していた。
(『だから怖いのよ』・・・なるほど・・・)
ゾンビは見た目は死体だが、ネクロマンサーにはロボットみたいなものか。
これは大きな収穫だ。偶然だがグレイウルフの襲撃は僥倖だった。ゾンビは
スピードは無いがここまで自律思考できるなら満足と言っていいだろう。
・・・見た目が悪いことを除けば・・・。
ゾンビの外見は変わらなかった。おそらく中身のゴーストの
生前の姿に準じているのだろう。
『ペイント』で色は付けることはできた。
「トリコロールやアメリカンにしたら、可愛く」 ならんかった。
(C)雨男 2021/11/04 ALL RIGHTS RESERVED




