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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 4
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アルカ大森林の市場を回る 18


 幸太郎はドワーフの肉屋へ行き、買った肉の整形を頼んだ。



骨や筋、骨周りの硬い所、太い血管も取ってもらう。



ブロックに分けてもらい、いくつかはステーキ用に切ってもらうことにした。





「金貨50枚出します。大急ぎで出来ますか?」





「任せておけって! ウチの職人全員でかかれば、あっという間よ!」





「では、他の必要な物を集める間に、お願いします。


これ、前金で置いときます」





いつの今にか、店の前には幸太郎へアピールする人々が大勢集まっていた。





「人だかりがすごいね。黒フードさんは、


あと何が欲しいの?」フレットが聞いてきた。





「うーん、香辛料と・・・あとはね・・・」





幸太郎はフレットの耳元でゴニョゴニョと話す。





「ええ? そんなもの・・・? まあ、でも売ってる店、あるよ。


案内するけど、本当にいいの・・・?」





「ああ、いくつか欲しいんだ」





フレットは幸太郎を、その店に案内した。



到着したのは見るからに怪しい武器の店。



もう『盗賊の一員でした』と言わんばかりの風体の男が出迎えてきた。





「へへへ、いらっしゃい。ウチの店の武器は一級品じゃあないが、


その分安くて扱いやすいですぜ?


どうですか? 予備としてならお得なモンばかり!」





幸太郎はチラチラ見ながら、いくつか鑑定してみた。



間違いなく量産品。怪しい出所の物ばかりだろう。



だが、これが欲しいのだ。





「ふーん。なんか手入れが悪い中古品ばかりに見えますが・・・?」





「いや、ご明察、ご明察! 確かにウチの商品は下取りとかで


入荷したモンばかりでさあ。しかし、だからこそ気軽に使えるし、


お安くなっております! 最初から割り切っていれば


決して損な買い物じゃありませんぜ?」





「うーん・・・。まあ・・・練習用くらいなら使えなくもないか。


では、いくつかいただきましょう。


お安くしていただけるんでしょうね?」





「はい、そりゃあもう! ウチはいつでも良心価格ですよ!」





幸太郎はショートソード、ロングソード、ショートスピア、スピア、



革の鎧、革の盾、木の剣、斧にハンマー、メイス、弓と矢、



ナイフ・・・などなど、結局ほとんど買い込んだ。





「毎度! 代金は金貨19枚と銀貨3枚です! 


まあ、たくさん買っていただいたんで、金貨19枚にしときやしょう!」





「ふふ・・・まあ、いいでしょう。では金貨20枚と、


おまけでこの銅貨の袋を付けましょう。


中身は100枚くらい、あるはずですよ」





「い、いいんですか? ダンナ!」





「ああ、取っといて下さい。ちょっと小銭が貯まってしまって」





「かぁ~~! 気前がいいねえ、ダンナ! 


ありがとうございました!!」





周囲の観衆から歓声が上がった。周囲の店の人々は知っているのだ。



この武器屋の男は戦場をうろついて、死んだ人の装備を集めて



売っている、と。元手がほぼゼロで一攫千金。



成り上がりの第一歩を掴んだ男。それは、他の商人たちの夢でもある。





これは粗悪品が欲しかったのと、ちょっと罪滅ぼしを兼ねての行動だ。





粗悪品は『使い捨てできる』前提で買った。ダンジョンでは



装備を見捨てざるを得ない場面もあるかもしれない。



そして、気が早いが幸太郎がカーレで冒険者登録をするときに、



エドガン、ヒガンの作った装備を身に着けていると、



同業者に狙われるかもしれない、と思ってのことだ。



しかし、粗悪品の剣や革の鎧、雑な造りの杖を持っていれば、



少なくとも金持ちには見えないだろう。



エドガン、ヒガンの装備は必要な時だけ、使えばいいのだ。





罪滅ぼしは、さっきのバカな行動のお詫びである。



『黒フードのネクロマンサー』が現れて、



『ドライアード』が人間をバラバラにして湖に叩き込んだ。



市場は冷え切ってしまった・・・。



もしかしたら、明日からはここに店を出す人が減るかもしれない。



ここで商売をして、生計を立てている人々にすれば



迷惑極まりない話だろう。





幸太郎は市場を盛り上げて、熱を入れたかったのだ。



だから、わざわざ気前のいい大盤振る舞いをしている。





(なんとか・・・活気はもどったかな・・・?)





幸太郎はちょっと安心した。その時、隣の店で面白いものを



売っていることに気が付いた。





「これは? ・・・石鹸ですか?」





それは小さな壺に入って、半生のゼリーみたいに見える。





「はい、いらっしゃい。そうです。これは石鹸ですよ。


『洗浄』の魔法ができてからめっきり数は減っていますが、


やっぱりこいつで手や体を洗うと、魔法とは違った


爽快感がありますからね! こいつはただの牛脂に灰汁をいれただけ。


こっちはイエローローズのしぼり汁が入ってます。


こっちはレモングラスの香りが・・・」





「全部下さい!! 全部!!」





「え? どれを・・・いや、全部ですか? ま、まいどありっ!!」





風呂に石鹸はつきもの。石鹸のない風呂など、



コーヒーの入ってないクリープ。





幸太郎はおもわずガッツポーズをした。『イエス! イエス!!』








幸太郎は最後に香辛料を売ってる店に行きたいと



フレットに頼んだ。





少し大きな店だった。数多くの種類の香辛料が並んでいる。



胡椒、マスタード、カルダモン、ハッカ、ニンニク、ウイキョウ、



ターメリック、ジンジャー・・・。





変わった所では干したドクダミまであった。



幸太郎になじみのあるものも多いが、全く聞いたことも無い



香辛料もいくつかあった。その中に、ひと際異彩を放つ、



凶悪な品を発見・・・。








『ボルカン・トウガラシ』








直接食べることは厳禁。通常、油やアルコールに漬けて、



それを2000倍くらいに薄めて使うらしい。匂いだけで凄い。



時々、酔っ払いが誤って食べて死にかけるという、もはや『凶器』だ。





シンリンが心配そうに幸太郎にささやく。





「それは、もはや食べ物とは呼べぬほどの威力であるぞ? 


黒フード殿、本当に大丈夫か?」





幸太郎はシンリンに、こそっと耳打ちする。





「実はこれで殺虫剤を作るつもりなんです。食べないのでご安心を・・・」





幸太郎は殺虫剤の材料になりそうな香辛料を、たくさん買い込んだ。



これと石鹸水で鍋いっぱいに殺虫剤を作り、水鉄砲で撃つ!



・・・という計画。








幸太郎は市場で爆買いした。最後に大量に買った肉を



『マジックボックス』に入れて、ホクホクで締めくくる。



肉屋のドワーフは『そんなに入るのか?』と驚いていたが、



幸太郎は『ドライアード様の力です』と、しれっと嘘をついた。





肉屋のドワーフは『なるほど!』と納得していた。



『ドライアードの力』と言えば、なんでも通りそうである。








幸太郎たちには関係ないが、この市場はこの日以降とても安全で、



誠実な商売が行われるようになっていく。



泥棒の体が羽虫のようにバラバラになり、



仮面の黒フードが現れるという事件があったせいだ。



ギルドも自警団も無いが、犯罪はキレイに消えた。










(C)雨男 2022/05/24 ALL RIGHTS RESERVED






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