種
「えーと。それで、なんで私がトレードされることになったのですか?」
「幸太郎、あんた輪廻転生ってわかる?」
「はい。死んだあとに再び生まれ変わることですよね?」
「そうそう。あと、宇宙にも年の差があるって知ってる?」
「いえ・・・そもそも他に宇宙があるなんて初耳です」
「ん。じゃあまずね、宇宙にも『早く生まれた年上の宇宙』と
『若い宇宙』があんのよ」
「大人の宇宙と子供の宇宙があるってことですか?」
「まあ、そんな感じ。で、アマテラス先輩の宇宙はここの宇宙より
ずっと年上なの。その宇宙の人類は輪廻転生を何度もしているから、
若い宇宙の人類よりレベルの高い魂が多いのよ」
幸太郎はポカンとした。レベルが高いと言われても
さっぱり意味がわからない。
「それで時々、『年上の宇宙』から『若い宇宙』へと
人材派遣してもらうことがあるの。若い宇宙に変革や向上を
もたらすためにね。あんたの地球にもいるんじゃない?
『聖者』とか『超人』なんて呼ばれた人たち」
「あー・・・。なるほど、確かにいますね。聖人なんて呼ばれる人たち」
「まあ、確認したわけじゃないけど、その人たちも多分
『年上の宇宙』から人材派遣でトレードされてきた人たちだと思うわ。
最も古い宇宙の人類なんかは聖者クラスがごろごろいるって話よ。
天使へ昇格した人たちさえいるわよ?」
「天使への昇格ですか? そんなことあるんだ・・・」
「それだけの苦労と勉強は必要だけどね。あんたのいた地球の
人類も『若い宇宙』へ派遣されるようなレベルに達し始めている
人たちがいるわ。私たちは派遣される魂を『種』って呼んでる」
「種・・・ですか」
「新しい土地で新しい芽吹きを生み出すからね。そういえば、
あんたのいた地球では『異世界転生』する話が人気なんですって?
もしかしたら『種』として派遣される事象を感じ取ってる人たちが
いるのかもね」
おおっと・・・まさか異世界ものにそんな荘厳かつ
遠大な背景があったとは・・・。幸太郎は感心した。うんうん。
(C)雨男 2021/10/28 ALL RIGHTS RESERVED