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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 4
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シェイクダウン 7


「ショートソードの扱いは割愛します。スモールシールドは


『敵の攻撃の方向を変える』ことを重点的に習いました。


受け止めると体重の軽い自分では、動きが止まってしまうからです。


敵の攻撃の方向に、自分の勢いをプラスするような感じで


『そらす』か『はじく』が基本です。


・・・では、次に小狼族の種族特性をお見せしますね」





そう言うと、モコはやや腰を落とした。



そして次の瞬間、凄まじい急加速で走り出した。





速い! 体重が軽いのに加え、強靭な足腰、そして足の『回転』が速い。



その結果、恐ろしい光景が生み出された。



急加速、急停止、急速な方向転換、鋭いスピンからの急加速・・・。





幸太郎は、何かに似ていると思った。





(これは!・・・そうだ! 『ボトムズ』のスコープドッグだ! 


そのリアルロボ最高峰の実戦兵器・・・アーマードトルーパーの


動きにそっくりなんだ!)





モコは幸太郎たちやドライアードたちの間を、



高速で縦横無尽に駆け抜ける。





「うおっ! 速い! こいつは、速いぜ!」





「す、すごいスピードだ・・・。俺では振り回されるな・・・」





「すごい! まるで燕だよ・・・!」





みんな驚いている。そこで幸太郎はちょっと思いついたことを言ってみた。





「モコ、『ラピッド・スピード』だ!」





「了解です!」





この状態で『ラピッド・スピード』が上乗せされるとどうなるか?



幸太郎は見てみたかった。発動に2,3秒ほどかかるが、



走りながらモコは『ラピッド・スピード』を発動させた。





とんでもない事になった。





滅茶苦茶速いのだ。まるで1人だけ別の時間軸に存在するみたいな動き。



もう幸太郎では目で追うのがやっとで、とても対応しきれないような



スピードになった。もちろん、幸太郎以外も、そのスピードに



唖然としている。





しかし、幸太郎は、ここで一つの悲しい現実が見えた。



小狼族が人狩りに襲われた時のことだ。





(そうか・・・。『ラピッド・スピード』無しでも速い


小狼族が弱いわけはない。『鑑定』が無ければ、


自分にスキルが発現しているかも知らないまま。


そして、バスキーさんがあまりに強いために、みんな戦う訓練を


していなかったんだ・・・。昨日、シバさんも


『バスキーに頼りきってた』みたいなことを言っていた・・・。


村の人たちにも『ラピッド・スピード』が発現していた人は


いたのかもしれないが、結局スキルも、種族特性も、


使いこなせていなかったのか・・・。なんとも皮肉な話だな。


バスキーさんが強いがゆえに、逆に村の人たちが


どんどん弱くなっていたとは・・・)








モコは幸太郎の横で急停止した。





「ついでに、今度はもう一つのスキルをお見せします。


私は白狼族のスキル『ウルフクライ』も発現しています。


これは吠えることで、相手や魔法の動きを1秒ほど停止させる


能力です。ジャンジャックさんの『震電』みたいに


魔法が消滅するわけではありません。停止するだけです。


使い方は昨日、お父さんに教えてもらいました。


実際に見てもらったほうが早いですね。


えーと、ではあの木を見ていて下さい」





モコは後方の木を指さした。太さ10センチくらいの木だ。





「では!」





モコが木へ向かってダッシュする。そして、木の手前で



急速にスピンをした。鋭く、素早く、力を凝縮し、ねじり込むように。



モコは溜めた力を一気に爆発させて、後ろ回し蹴りを



木に叩き込んだ。見事な開脚、モコの長い足が一直線に木に刺さる。





バキバキと音を立てながら木は折れて、ちょうど幸太郎の方へ



向かって倒れてきた。『うわわっ』 幸太郎が情けない声を出す。



だが、モコはあわてず、するりと幸太郎の前に入る。そして、



倒れてくる木に向かって・・・





『がうっ!』





と、一声吠えた。





全員の前に不思議な光景が広がっている。



モコの前方の倒れてくる木と、舞い散る葉がピタリと空中で



静止しているのだ。時間にすればたった1秒ほど。しかし、まるで



リモコンの『一時停止』ボタンを押したように止まった。





1秒。その後、再び木が動き出す。モコは再び体をスピンさせると、



さっきの後ろ回し蹴りを垂直に炸裂させた。見事な180度開脚、



実に美しい蹴りだ。倒れてきた木は、今度は幸太郎と逆方向に



吹っ飛んで行った。





「今のが白狼族スキル『ウルフクライ』です。



自分の前方5メートルくらいまでの対象を1秒停止させます。



ある程度、対象を自分の意志で選択できるので、



使い勝手の良いスキルです。しかし、無敵ではありません。



相手や魔法は止まっているだけなので、効果時間が終了すると、



そのまま動きます。そして相手の意志が止まっているわけでは



ないので・・・例えば、エンリイの『石体の術』などで



解除することはできるんです。お父さんは



『強い奴は即座に何かで相殺してくる可能性があるから過信するな』



と言ってました」





「しかし、これは魔物相手なら無敵に近いんじゃねえか? 


さっきの『ラピッド・スピード』とのコンボなら無傷で済む奴は、


そうそういないだろうぜ」





ジャンジャックも絶賛している。





「いえ、それが・・・。私は戦いの訓練をあまりしていないし、


実戦経験も少ないので、私が1日に使用できるスキルは、


合計で2つまでなんです。お父さんがそれ以上は使うな、と。


それ以上使用すると、次の日は最悪の場合丸一日動けなくなるだろうって


言われています・・・」





「では、モコのスキルは切り札として温存しておこう。


そういえば、『ラピッド・スピード』って


どのくらい発動時間があるんだ?」





幸太郎がモコに質問した。





「昨日、一度試してみました。時間はおよそ3分ってところです。


砂時計で計りました。熟練すると10分くらい使えるようになるそうです。


これはお母さんに聞きました」





「なるほど。これからの伸びしろに期待が持てるな。すごいぞ、モコ!


種族特性とも相性がいいし、これからどんどん強くなるわけだ。


・・・あ。そういえば、最初は小狼族の種族特性を


見せてる途中だったっけ・・・。


モコ、まだアレを披露してないよな。俺が一番頼りにしてる能力」










(C)雨男 2022/04/24 ALL RIGHTS RESERVED





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