シェイクダウン 2
「さてと、俺からだな。生活魔法とかは省略でいいか?
じゃ、攻撃魔法を公開するか。俺は『火球』の魔法が使える。
これはスライムやラージスラッグと戦う時に便利なんで覚えた。
だが、他には使える攻撃魔法は無い。あんまり当てにはしないでくれ。
次にスキルだが・・・『ウエポンマスター』、『オーラスマッシュ』、
そして、『震電』がある」
「ジャンジャックのスキルはどれも珍しい物ばかりだ。
一見の価値はあるぞ」
グレゴリオがニヤニヤしながら付け足した。
「あんまり煽るなよ・・・。まあ、珍しいのは間違いないけどな。
なんでこんなスキルが俺に身に着いたのかは知らん。
修行してるうちに、いつの間にか備わっていた。
ギルドにある『鑑定の水晶』で表示された時は、俺も驚いた。
では順番に説明すっか。
『ウエポンマスター』は全ての武器を使い慣れた武器のように
使用できるってスキルだ。例えば剣でも幅や長さ、重さ、
重心の位置が違う。同じロングソードでも重心の位置が
微妙に違うのは知っての通りだ。まあ『クセが違う』ってやつだな。
だが、この『ウエポンマスター』があれば、どんな武器でも
長年愛用したように最適な使い方ができるんだ。
わかりやすい例だと弓だな。ひろった弓でも、相手から
奪った弓でも、動かない的なら百発百中で当てることができる」
「おお! 凄いスキルだな! 便利じゃないか!」
「いやいや、幸太郎、これは確かに便利なスキルだが、
訓練をすれば同じようなことはスキルが無くてもできるぜ?
それに全く弱点が無いわけじゃない。さっきの弓だが、
専門に弓を鍛え続けた奴と、俺とじゃ結果に差が出るんだ」
「差が出る? なんで?」
「それに特化した筋肉じゃないからさ。まず飛距離に差が出る。
そして何度も弓を射れば、俺の方は、どんどん飛距離が落ちてくる。
当然、威力も落ちてくる。非常に便利なのは間違いないが、
万能ってわけじゃねえよ」
「ふふふ、幸太郎殿、ジャンジャックは謙遜してるが、
このスキルの真骨頂は対応力だ。
なにせ投石でも百発百中で殺傷力も充分、
ひろった枯れ枝でも武器になる。
指で弾いた銅貨でさえ笑えない威力だ。
冒険者なら垂涎のスキルと言える」
「おだてるなよ、ゴリオ・・・。お前だってえげつないスキル
持ってるだろ。ま、それは後だ。
次は『オーラスマッシュ』を説明しよう。このスキルは実際に
見せたほうが早いな。では、後ろのあの木を見ていてくれ」
ジャンジャックはロングソードを抜いて構えた。
すると刀身が青い光を放ち始めた。
そして、太さ30センチはあるだろう木の幹へ
ロングソードを撃ち込んだ。
幸太郎は思わず『げっ』という声が漏れた。
ジャンジャックの剣は木の幹を
豆腐のようにスルリと斬ったのだ。斬られた木は他の木の枝を
バキバキと折りながら、ゆっくりと倒れて地面に横たわった。
「このスキルは『自分の生命力を攻撃力に変換するスキル』
だそうだ。使用すると疲労感がある。
何度か使うと頭痛がしてくるのは、他の戦闘スキルと同じだな。
だが、強力な分ペナルティもでかい。文献で調べたら記述を発見した。
変換する生命力が尽きると、即死するそうだ。
実際にその文献にでてくる奴は、戦闘中に『オーラスマッシュ』を
撃つと同時に突然死んだらしい」
幸太郎はジャンジャックを鑑定してみた。
HPが88から68に減っている。
つまり、もし幸太郎だったなら1発目で即死するわけだ。笑えない。
「だが、このスキルは切り札として実に有効だぜ。
威力がハンパないし、俺の『ウエポンマスター』との相乗効果らしいが、
弓でも投石でも、斧でも槍でも発動させることができる。
極端な話、パンチやキックでも可能だ。ただ、まあ、
生命力を攻撃力に変換ってんで、俺は1日2回までって決めてる。
その日の体調で使える回数は変化するだろうから」
幸太郎は、初めてアルカ大森林に来た時のトラブルを
思い出していた。幸太郎がリックスに胸を弓で射られた時、
ジャンジャックとグレゴリオは樹上の見張りに対して
全く焦りを見せなかった。確かにこれなら、なんとでもなるだろう。
最悪、木を切り倒してもいいのだから。
(C)雨男 2022/04/17 ALL RIGHTS RESERVED




