エンリイと雑談 8
エンリイから全てのいきさつを聞いたギルドの職員は、
ジーベックの支部長に報告にいった。
しばらくして戻ってきた職員は、あっさり言った。
「全て上に報告しました。エンリイさんは一切おとがめなしです。
無事で良かったですね。お疲れ様でした」
エンリイは拍子抜けした。何しろ報告した内容には、何も証拠がないのだ。
しかし、エンリイがそれでも正直に報告したのは、
ギルドに虚偽の報告をしてそれが後からバレると、
もっと面倒なことになるかもしれないという心配からだった。
「本当に何もおとがめなし? ボクは一応、冒険者3人
殺してしまったんだよ?」
「ええ。・・・実は・・・」
ギルドの職員は声を潜めて『内緒にしてください』と話し出した。
「ギルドでもあの3人には疑いの目を向け始めていたところだったんです。
ギルドには一応過去の活動記録が数年分は保管されています。
重要と思われる記録には長期保存の義務もあります。
あの3人とパーティーを組んだ冒険者・・・
しかも女性ばかりが、この3年で11人、死亡、または任務中に行方不明と
なっていました。冒険者が任務で死亡するのは、
正直いって珍しくありません。
しかし、女性ばかり11人という偏り、そして、
あの3人は必ず無事に帰ってくる・・・。
他の冒険者から不審に思う報告があったのです。
彼らとパーティーを組んでも無事に依頼を達成して
帰ってくる人の方が多いので、ギルドも気づくのが遅れました。
実は今、内偵するメンバーを選考しているところだったんですよ」
ギルドの職員は、もう一度『くれぐれも内緒にして下さい』と
念を押して話を続けた。
「一応ギルドとしては
『あいつらが死んだのなら、面倒がなくていいや』
とは言えませんからね。ただ、エンリイさんの報告に
何か証拠があるわけではないので、
この件は記録だけとってスルー、という決定になりました。
でも、ご無事でよかったです。そして、正直に報告して頂いて感謝します。
ありがとうございました」
エンリイはギルドの建物をあとにした。とにかく眠りたかった。
翌日、エンリイはジーベックを出ることにした。やはりなんか気持ち悪い。
ギルドへそのことを伝えると『首都ヨッカイドウ』へ
行くことを勧められた。
そしてジーベック支部長の『特別推薦状』を渡される。
これは事件のいきさつとエンリイに便宜を図ってやってくれという内容だ。
以後、エンリイはジャンバ王国の『首都ヨッカイドウ』でC級に昇格するまで
活動することになった。・・・ソロで。
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