エンリイと雑談 6
「ボクはギルドカードを取得した時に、特例としてD級にしてもらったんだ。
普通は『新人』、『E級』、『D級』、『C級』・・・の順番なんだけど、
すでに3年下積みしてたのを、村のギルドは見てたからね。それで、
早速ジーベックのギルドでD級ランクの依頼を探していたところ・・・。
掲示板の前で『パーティーを組まないか?』って誘われたんだ」
エンリイに声をかけてきたパーティーは3人組。男2人、女1人だった。
『これからゴブリン退治の依頼を受ける予定だが、どうも群れの中に
ホブゴブリンやゴブリンウォリアーが混じっているらしい。
せめて、もう1人、D級以上の戦力が欲しい』
このような説明をしてきた。
「ボクは快諾した。ホブゴブリンもゴブリンウォリアーも
戦ったことがあるからね」
出発は明日だというので、エンリイは準備も兼ねて、
彼らと行動を共にした。
「そして・・・。夕食を共にして、宿に戻る前に、パーティーの女の子に
自分が魔猿族だってしゃべっちゃったんだ・・・うかつだったよ」
ゴブリン退治に出発する日。エンリイは最初に聞いてた方向とは
違う方向へ向かうのを不思議に思った。しかし
『こっちは回り道だが、安全に目的地に着く』という
女の話を信用してしまった。
町から2時間ほど歩いた場所で、
前方に4人の人相の悪い男たちが現れた。
エンリイが不審に思って棍を構えると、いきなりエンリイは
『拘束』の魔法をかけられた。
魔法をかけたのはパーティーの女だった。
「ごめんねぇ~~~。うふふふ。パーティーに女がいて、しかも、
この幼い顔立ちだと、どうしても油断しちゃうわよね~~~。
でも、エンリイちゃんの自業自得よ?
初対面の人間を信用しちゃ、だ・め・よ?」
「そんな! ボクを騙したのか!? では、この4人組は!」
「そうよぉ? この人たちは『人狩り』さんでぇーす!
大正解~!」
「まさか・・・。君たちはいつもこんな事を・・・?」
「あったりぃ~! あたしたちはね、見慣れない上玉の女がいたら、
人狩りさんに連絡するのよ。そして、色々聞き出して
『売り飛ばして大丈夫そう』だったら罠にはめるの。
もし、手を出したらまずい相手だったら、そのまま適当に
ゴブリン退治したり、『空振りだった』ってそのまま帰るのよ。
冒険者なら『ゴブリンにやられた』とギルドに報告すれば済んじゃうから、
人狩りさんに渡しても、だーれも疑わないもん。いい商売でしょ~~?」
「なんて、ひどいことを・・・。
冒険者として恥ずかしいとは思わないのか!」
「なんとでも言いなさい。言えるのは今だけだもん。
あんたはね。特別よ。喜こんでね?
あんたはすごい美人なうえに、魔猿族って話をしたら、
貴族の人がね『是非、奴隷にしたい。金貨80枚出そう!』ですって~!
ぼろ儲けよねっ! 今までで、ぶっちぎりの最高額よ! たまんないわぁ!
あんたは貴族のオモチャで終わるけど、いいでしょ? そのぶん、
あたしたちが幸せになってあげるっ! ね?」
人狩りたちが下卑た笑い声をあげた。
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