エンリイと雑談 3
「それでダークエルフも例外って? ダークエルフも町には
来ない種族なのかい?」
幸太郎は話題を変えることにした。しかし。
「うん・・・。ダークエルフも貴族たちから狙われる種族なんだ。
ほら、ダークエルフも美形揃いでしょ? おまけにエルフたちと
違って肉付きもいいから、人族からすると好みの体型をしてるんだよ」
「ダークエルフも狙われる種族なのか・・・」
現代の日本から来た幸太郎には、この世界で一番ついて行けない所だ。
「エンリイ・・・。そういえば、開放したエルフはダークエルフに対して、
なにか『わだかまり』みたいなものを持ってるように感じたけど・・・」
「それは・・・。お互いの過去がからんでる話だね。実は人狩りの中には
エルフだけの集団もあるんだ」
「エルフがダークエルフを狩るっていうのか???」
「人族の中にもいろいろいるでしょ? 幸太郎サンみたいな『いいひと』も
いれば、『人狩り』や『貴族』もいる。エルフやドワーフは考え方が
人族に近いんだ。『ジュッカ大森林』のエルフたちはダークエルフと
同じで人族が嫌い。一方、町にいるエルフは商人も冒険者も・・・
そして、『人狩り』もいる。昔、ダークエルフを一番たくさん捕まえたのは
エルフの人狩りだったんだよ・・・」
「そうか・・・。ダークエルフにしてみれば仲間と思っていたエルフが
裏切ったように感じられるのか・・・」
「実際にエルフの人狩りは、ダークエルフを助けるふりをして捕まえる方法を
好んで使ったんだ。そのせいでダークエルフはエルフ全体を警戒するしか
なくなったんだよ」
「人族と同じように・・・か」
幸太郎は溜息が出た。幸太郎がいた地球もたいがいひどいと思っていたが、
この世界も悲劇が多いようだ。日本のありがたさが、いまさら身に染みた。
(もしかたら・・・『荒野の聖者』って伝説は、彼ら亜人たちの希望が
形になったものなのかもしれないな・・・)
「な、なんか暗い話になっちゃって、ごめんね幸太郎サン・・・」
「いや、いいんだ。ありがとうエンリイ。俺の知らないことばかりだった。
すごく感謝してるよ。ありがとう」
幸太郎はエンリイの目を見ながら微笑んだ。
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