敵に情報を与えるな
「君が聞きたいのは、今の攻防の中身だろうが、
それは植物で言うなら『花』の部分だな。
戦いを左右するのは枝葉や茎、そして根っこだよ。
花の部分など最終的な結果に過ぎないさ。
実は花の部分はどうでもいいことなんだ」
「言ってる意味がよくわかんない。そんなことより、
さっさとさっきの技とか教えてくれよ」
「レオ。それが敗北のスタートなんだぞ。
スタートから敗北が始まれば、
あとは最後まで敗北が決定してしまう。
実戦での敗北は・・・死、だ」
「少年よ、焦るな。俺は君に強くなってほしいんだ。
世界にはエルロー辺境伯のような邪悪な存在はまだまだいるだろう。
俺が死んだら、君が子供たちを救ってやってくれ」
「ご、ご主人様!!」
「幸太郎お兄ちゃん!」
「ま、まあまあ、例えだよ、例え・・・。ごほん、
ではもう最初から説明しよう。少年よ、もし君が退屈だと感じたら、
それは実戦での死につながると覚悟してほしい。
実際に今、君は実力差が全く分かっていなかっただろう?
結果はどうなった?」
「むむ・・・。わかったよ・・・。真面目に聞くよ・・・」
「では、始めよう。君はさっき木陰から俺を睨んでいたな?
俺がモコと子供たちを救出してきて、
みんながヒーロー扱いしていることが気に入らなかったみたいだな。
まず、そこで最大の失敗だ。
『うかつに敵に情報を与えるな』・・・だよ。
君が俺を睨んでいたことで、俺は君が敵意を
持っていることがわかった。
俺が君の情報を集めて分析し始めたのはそこからだ」
「情報だって? 俺がお前にどんな情報を与えたっていうんだ?
それが勝負の結果につながるっていうのか?」
「そうだよ。その後の会話は全て君の失神という
結果につながっている。最初に君が言ったセリフを憶えているかい?
たしか『成人するころには父さんみたいに強くなっていて、
俺が村を守り、子供たちも救い出していた』・・・だったか?
ここで、もう君が自分で自分の最大の弱点を語っている」
「じゃ、弱点だって?! そんなことあるもんかっ!!
馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
「レオ、落ち着け。今、幸太郎君は大事な話をしている。
お前の人生を左右する話だ」
(C)雨男 2022/02/22 ALL RIGHTS RESERVED




