早速、迷子
ひとしきり『ガンダム大地に立つ』を脳内で演奏したあと、
幸太郎は改めて周囲を見渡した。
「なんにもねえ・・・」
自分のいる草原。林や森が見える。すぐ後ろには大きな森。
はるか遠くに山脈が見えた。
「町・・・は見えないな」
仕方ないと、幸太郎は割り切って、早速亡者を探し始めた。
実はこの時視界の中に小さくちょっとだけ村が見えていたのだが、
幸太郎は気が付かなった。
あまりに現代の日本と違いすぎるからである。
「うーむ。しかし亡者って全然見当たらないけど・・・。
アステラ様が言うほど数は多くないのかな?
いや、きっと明るいからだ。森の薄暗いほうへ
行ったらいるかもしれない。大きな石をひっくり返したり、
木をゆすってみよう」 虫か
幸太郎は森の奥へ向かって歩き出す。幸太郎は心に決めていたのだ。
(まずは亡者を一人成仏させて、アステラ様やムラサキさんを
安心させよう)
そして自分の愚かな行為に全く気が付いていなかった。
そう。現在位置もわからないのに森の奥へ向かった幸太郎は、
最初の落下地点さえ見失った。
中身42歳のおっさんは地上へ降りて早々に迷子になったのである。
残念ながらこの世界にはまだ『迷子センター』は設置されていない・・・。
(C)雨男 2021/11/04 ALL RIGHTS RESERVED




