幸太郎、イキりまくる
「ふむ、少年よ。自分の手で村を守れなかったのが悔しいのか?」
あえて、幸太郎は挑発的な言動をする。
レオは14歳。モコとは4歳違いだ。身長は白狼族の血が
入っているせいか165センチくらい。小狼族にしては大柄だ。
・・・モコは胸だけ白狼族の影響が出ているようだ・・・。
「・・・。ふん。俺が成人するころには父さんみたいに
強くなっているさ! そしたらお前の力なんか借りなくても、
俺が村も守って子供たちも救い出していた!」
「威勢がいいな、少年よ。しかし、俺が見るに
君はまだまだ修行が足りないようだ。
過剰な自信は油断となり、死を招くぞ?」
幸太郎はレオに強くなって欲しかった。
この世界では『話し合い』など聞いてくれない奴らが多い。
相手を説得する最も効果的な方法は、
相手の理解できるレベルに合わせて対応することだ。
力に頼る者には力で対応する。
たとえ現代の日本から見れば愚かに見えても、
相手に話をする意志が無いのだから仕方ない。
愚かと言われようと相手が理解できる方法をとり、
相手に『悟らせる』のが一番早い。
幸太郎がかつて読んだ本に、さる高名な東洋医学の名医が書いた本があった。
そこにはこんなエピソードが書いてある。
ある家の子供が、二階の窓べりに座って遊ぶのが大好きで、
なんとか止めさせたいが、ちっともいう事を聞かないという。
何度も危ないということを説明したが効果が無い。
その名医は相談を受けて一計を案じた。
ある日、その子供が食事に使っている茶碗を持って
二階へ行き、その子が見ている前で窓から茶碗を落としたのだ。
茶碗は地面へ落下。当然、粉々に砕けた。
それ以来、子供は二度と二階の窓べりで遊ばなくなったという。
『悟った』のだ。
話を聞く気の無い奴が、この世界に大勢いるということは、
力の無い奴は『無言』にされてしまうということだ。
相手に話を聞いてもらうためにも力は必要。
「俺は今だって、お前より強いさ!
たとえ油断してもあんたなんかに負けないね!」
バスキーは幸太郎の意図がわかったようだ。
腕組みをして成り行きを見ている。
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