投げナイフ
「ボクら魔猿族は、その『セイテンタイセイ』って人の
末裔って言われているんだ。
その人は無敵の強さを誇ったって聞いてる。
僕らの『魔猿闘術』が子孫の証なんだって。
でも、なんで幸太郎サンは知ってるの?」
「い・・・いや、まあ、俺の故郷の図書館で
一度読んだことがあったんでな・・・」
「そうなんだ! 幸太郎サンは博識だね・・・」
幸太郎も内心びっくり仰天だった。
『そんごくう』の話は知ってるが、おとぎ話だと思っていた。
まさか実在した、どころか、この世界に来たことがあるとは・・・。
さすがは闘戦勝仏・・・。
「ところで、棍ってことはエンリイは棒術を使うのか。
それはすごい。俺の故郷でも
『突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀』
って言って棒術こそ最強という人もいるよ」
「ええっ!? ご主人様! 私も棒術にします!」
「待て待て。こうなるとモコにはショートソードを習ってほしいな。
俺の故郷で棒術最強って話は確かにあるが、棍は『切断』ができない。
エンリイもそれは思うだろう?」
「実はボクのリュックの中にはナイフが入っているよ。
魔物の中には切断のほうが有効って場合も多いからね。
ボクは『魔猿闘術』っていう制限があるから、
逆に剣などは扱いにくいんだ。
モコが切断できる武器を持てば、お互いにカバーできると思うな」
「それに、ダンジョンでは、モコは俺の護衛としての
役割が求められるだろう。そうなると、片手で扱える盾と
ショートソードが一番応用が効きそうだ。モコ、頼めるか?」
「はい! それでしたらお任せ下さい!」
「バスキーさん、すいませんがスモールシールドを
持った場合のショートソードの扱いを
モコに教えていただけませんか?」
「了解だ。おそらくモコの位置はパーティーの真ん中、
幸太郎君の横になるだろう。むしろ盾の扱いを重点的に教えよう。
それと、モコ、投げナイフも教えよう。おそらく、
剣よりも出番が多くなるはずだ」
投げナイフ・・・。幸太郎は明日、村の鍛冶屋に
十字手裏剣を作ってもらおうと思った。
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