番外編 黒電話
ここはアステラの部屋。
玄関わきに黒電話がある。黒電話にはムラサキが作った、
かわいい手作りのカバーがついている。
その黒電話が今『ジ~コココ』となごむ音を立てていた。
「あ。閻魔様ですか? アステラです。今、よろしいですか?
・・・今回は色々とご尽力下さってありがとうございます。・・・はい。
おかげさまで、あの胎児は無事に生き返って、生まれたようです。
・・・ええ、・・・はい、・・・本当に幸太郎は頑固で・・・。
いえ・・・。いえ、本当に無茶なことを・・・。
そ、そんな、笑い事ではありませんよ・・・もう・・・。
え? ち、違いますっ。そんなんじゃありません!
冗談がすぎますよ閻魔様・・・。はい。このお礼はいずれ改めて・・・。
はい。・・・はい。・・・今回は本当にありがとうございました・・・。
では失礼いたします・・・」
黒電話が『チンッ』と音をたてる。
「閻魔様の助力が得られて良かったですね。アステラ様」
ムラサキがお茶を淹れて、ちゃぶ台に置いた。
「さすがに閻魔様の助力が無かったら、
あの胎児の魂は見つけられなかったわよ・・・。
冥界は広すぎるからね・・・。
それにしても、全く何やってんのよ幸太郎は・・・」
「すでに死んでいる胎児を生き返らせようって、
無茶なことを考えますよね・・・」
「前代未聞よ! そりゃあ、確かにへその緒は
『どこまでが胎児の体で、どこからが母親の体か』
なんて決まっていないわよ。元々、胎児自体が母親の細胞を
基にできてるんだから、明確な境目なんてあるわけないわ」
「幸太郎君は・・・。『交信』が空振りしたことで、
まだ死んでないって判断したみたいですけど・・・。
その後の『陽光の癒し』が空振りしたことで
生きてないってこともわかったはず・・・。でも幸太郎君は・・・」
「あいつ『へその緒から細胞一個づつ再生させる』って
選択をしたのよ・・・。あきれたわ。
何万回『陽光の癒し』を使うつもりだったのよ、あいつ!」
「しかも、幸太郎君は途中から気が付いていましたよね・・・」
「ええ・・・。『太陽神の加護』で太陽魔法は無限に使えるけど・・・。
自分の魂と命が先に耐えられなくなって死ぬってことにね・・・」
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