2500回
幸太郎は宿屋で部屋をとった。この宿も大樹が家になっている
不思議な店だ。
香辛料を買い付けにくる行商人のために、この宿屋はあるという。
一晩で銀貨2枚。部屋は2階だ。
幸太郎は日本円でいくらくらいだろう・・・と考えたが、
すぐに考えるのを止めた。
物の価値がまるっきり違う異世界と、現代の日本の
物価を比べても無意味だからだ。
部屋に入ると『時計塔』呼んで見た。午後10時を回っている。
幸太郎はパンと水だけ食べるとすぐに寝ることにした。
・・・と、いうのも。さっきから頭が割れるように痛む。
幸太郎は『太陽神の加護』で『状態異常無効』がある。
『陽光の癒し』でHPも回復できる。
しかし、頭がズキズキと痛む。
これはおそらく、魔法の使い過ぎだろう。
実は幸太郎は今日一日だけで、2500回以上の魔法を使用している。
普段は無視できる程度の精神的な消耗も、
今回ばかりは負担が重すぎた。
自分に『洗浄』をかけると、ベッドに倒れた。文字通り『倒れた』
頭が割れるように痛む。体が全く動かない。ひとつだけ良かったのは、
同時に猛烈な眠気が襲ってきたことだ。それで良かった。
どうせもう指一本動かす力さえ残っていない。
幸太郎は泥のように眠り込んだ。
失神と言った方が近いかもしれない。
翌朝。
幸太郎がぼんやりと意識を取り戻すと、すでに外は明るくなっていた。
『時計塔』を見るともう9時を回っている。
昨日の行動が、どれほど無茶だったかを物語っていた。
ぼーっと窓から空を眺めていた幸太郎。
ここで、ようやく外がなにやら騒がしいことに気付いた。
幸太郎は何げなく下を見る。
その光景を見た幸太郎はひっくり返って驚いた。
あわててシャツや服を着ると、1階へ駆け降りてゆく。
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