死ぬわ
ドライアードたちは、しばらく放心したように、
とろんとした顔で立ち尽くしていた。
そして、頬を上気させたまま、幸太郎に向き合った。
「素晴らしい水であった。幸太郎殿、感謝するぞ。
お礼をせねばなるまい。我らドライアードはこの大森林の
化身といってよい。今後、この大森林にあるものは自由に使ってよいぞ」
「それは、ありがとうございます。では、もし、何か必要な時は
ありがたくいただきます」
「うむ。遠慮はいらぬぞ。もちろん・・・我ら3人も、
幸太郎殿の『自由』にしてもよいのだぞ?」
幸太郎は背筋が冷たくなった。
以前『ドライアードと交わった男は死ぬ』という話を
何かの本で読んだ。それは当然だろう。
体力無限の女と寝たら、そりゃあ死ぬわなあ。
ドライアードは確かに美しい。しかし、それは地獄への片道切符だ。
でも、『それでもかまわない!』と言いたくなるだけの
美しさは確かにある。
「お気持ちだけ、ありがたく頂きます。私には身に余る栄誉です」
「む? そうか? 幸太郎殿は欲が無いのう・・・」
「ジュリア。もしかしたら、アレではないか?
ニンゲンにはもっと幼い面影を残した少女が好きだという
性癖があると聞く。きっと、幸太郎殿は少女が好きなのであろう」
「ほう! さすがはモーリー。では、我らももっと幼い姿に・・・」
「違いますっ!! 俺はロリコンではありません! もー!」
抗議の声を上げる幸太郎の膝が、突然崩れ落ちた。
クロブー長老たちが青くなって駆け寄った。
「いや、大丈夫ですよ。安心したら、ちょっと気が抜けただけです。
そろそろ、私も眠くなってきました。どこかに宿屋はありますか?」
「宿屋なら、ちょうどわしの部屋から、広場をはさんで
向かい側にございます・・・。
しかし、お部屋でしたら、わしらがご用意いたしますが」
「いえいえ、それには及びません。
ちょっとやることもありますから、宿屋に行きます。
では、忙しい中、恐縮ですが・・・
これにて失礼させていただきます。皆様おやすみなさい。
ジュリア様たちも、ありがとうございました。
クロブー長老、すいませんが、お先に休ませてもらいます」
幸太郎は長老の部屋を出た。そのまま向かいの宿屋に向かう。
歩いて行く幸太郎の上方の木の枝に、1人の人影。
その人物は一部始終を、枝の上からずっと見ていた。
「幸太郎サンっていうのか・・・。すごい人がいるもんだね。
ちょっと感動しちゃったな。
ボクも仲間に入れて欲しいなあ・・・。明日、頼んでみるか・・・」
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