穏やかな空気
エリーのお腹が淡い光を帯びた。
それは、お腹の胎児が光を発しているように見えた。
幸太郎はさらに、さらに『陽光の癒し』をかけ続ける。
そして、ついに『陽光の癒し』に手ごたえを幸太郎は感じた。
(・・・わかる・・・。何かが再生している・・・)
エリーのお腹は光りだした。金色の光。それはどんどん強くなっていく。
「ああ・・・。これは奇跡・・・? 命の光・・・まるで太陽・・・」
『陽光の癒し』をかけ続ける幸太郎の体が、
突然、淡い白い光に包まれた。
そして、幸太郎の首のあたりから、小さな白い光が宙に浮かぶと、
そのままエリーのお腹に吸い込まれていった。
幸太郎は赤ん坊の笑い声を聞いたような気がした。
光はさらに強くなっていく。
そして、幸太郎はエリーのお腹から不思議な声をはっきり聞いた。
『あと、もう一回だよ・・・』
幸太郎はニヤリと笑う。
「了解だ!」
幸太郎は大きく息を吸って、
両手同時に『陽光の癒し』を発動させる。
「震えるぞハート!」
「燃え尽きるほどヒート!」
「今こそ刻め! 命のビートを!」
「サンライトイエロー・オーバードライブ!!」
ひときわ大きな輝きが部屋に溢れた。
それは渦をまいてエリーのお腹に集まって消えた。
エリーがポロポロと泣き出した。
「ああ! 今、動きました! お腹を蹴った・・・。
ああ、ああ、私の赤ちゃん・・・」
幸太郎は椅子に崩れ落ちた。「やった・・・」
幸太郎は汗びっしょりだ。クロブー長老も泣いている。
「幸太郎様・・・。なんとお礼をいったらよいのか・・・。
もう、誰もが諦めておりました・・・。
これは、幸太郎様が起こした奇跡ですじゃ・・・」
「いいえ、クロブー長老。これは母の愛と、
執念が起こした奇跡です。私は大したことはしておりません。
この胎児を救ったのは、紛れもなくエリーさんです。
どうか、エリーさんを褒めてあげて下さい」
部屋の中に、穏やかな空気が満ちた。
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