がんばれ
(生きているのか、死んでいるのか・・・。
完全には決まっていないのならば、生きていたっていいわけだ!)
幸太郎は『陽光の癒し』をかけた。だが、何の手ごたえも無かった。
こんなことは初めてだ。幸太郎は一瞬背中が冷たくなった。
しかし、幸太郎は歯を食いしばる。
(アニメでも言ってた。『奇跡は起こしてこそ価値がある』ってな!!
一度でダメなら10回だ! それでもダメなら100回だ!
俺が容易く諦めると思うなよ!)
幸太郎は両手で別々に『陽光の癒し』を発動させ続ける。
5回・・・10回・・・20回・・・30回・・・。
何の手ごたえも無い。空を掻くようだ。
幸太郎の脳裏に『絶望』という文字が浮かぶ。
だが、幸太郎は自分の頬を両手で張った。パシィーンッという音が響く。
(死神様! あいにくだったな、俺はおっさんだから、
いちいち絶望ごときで折れないんだよ!
どっちがしつこいか根競べしてもらおうか!)
すでに『陽光の癒し』は100回を越えた。
すでにクロブー長老は諦めた顔をしている。
母親のエリーですら、諦めの気配が漂った。
「幸太郎様・・・。やはり、私のお腹の子は・・・」
「諦めるな! エリーさんが諦めたら、この子の味方は
いなくなってしまうんだぞ! 母親が子供の味方をしなくて、
いったい誰がこの子の味方をするんだっ!」
幸太郎は『陽光の癒し』が300回を越えたところで数えるのを止めた。
幸太郎は汗だくになっている。しかし、まだ目は死んでない。
幸太郎は胎児にむかって呼びかけていた。
(がんばれ・・・がんばれ・・・。君の味方はここにいるぞ!
君も諦めるな・・・)
もう、何回『陽光の癒し』をかけたのかわからない。
少なくとも600回は越えたはずだ。
そして・・・ついに変化が現れた。
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