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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林
372/1070

自滅だよ


「エルロー辺境伯の寝室はすごいものだった。


ギラギラ、ゴテゴテと過剰な装飾にあふれていたよ。


もちろん、人間は地味な方が好きとか、派手な方が好きっていう好みはある。


しかし、あれは常軌を逸しているね。エルロー辺境伯は、


その過剰な装飾を自分の一部としていたんだ。


つまり、寝る時までそんなものに囲まれていないと眠れなかったんだよ。


彼には『必要』だった。だから一般人には無意味でも


迷わず黄金のスプーンを買う」





「エルロー辺境伯は、今の境遇が不満だったってのか・・・?」





「全然足りないと思っていたんだよ。


『もっと自分を崇めてほしい』『もっと自分をたたえてほしい』


『もっと自分を敬ってほしい』『他人はなぜ自分の価値を認めないのか』


『他人は自分に嫉妬して、自分の栄達を妨害している』


『他人は自分を攻撃している』『なんて自分は不運なんだ』


『誰も彼もが自分を優遇しなくてはならないのに』・・・。


一から十まで、そんな心しか持っていない。


他人が自分を上回る部分は全て、


『あいつは俺に嫉妬して嘘をばら撒いている。卑怯者め』


としか理解していない」





「おいおい、それじゃあ、まるで自分が王になりたいみたいじゃないか」





「そうだよ? 全然不思議じゃないさ。エルロー辺境伯は、


それが本来あるべきこの世界の姿だと、本気で思っていたよ。





『俺こそがこの世界で最も上位の存在だということを、


なぜ他の奴らは認めないんだ。世界は俺に嫉妬して、


俺ををさげすむ奴らであふれている。俺は善良な被害者だ』





と寝る時まで思っていたんだよ。


正当なこの世界の王は自分だと確信していた。


誰もが自分を優遇するべきだと信じていた。


わかりやすく例えるなら、ここにパンが一つあるとしよう。


それを半分こしようと言ったら、


エルロー辺境伯は自分が9割で相手が1割にするだろう。


それに対して文句を言ったら、


彼は本気で『自分はいわれのない攻撃を受けた』と思うだろう。


彼にとって『公平』とは自分が圧倒的に優遇されるということ。


彼はむしろ1割も与えたことを、まるで世界の半分を


譲ってやったくらいの気持ちになるだろう。


エルロー辺境伯は他人が自分より優れているってことを


認められない奴だった。自分が他人に嫉妬しているのだから、


相手も自分に嫉妬しているはずだって考えだった。


しかし、残念ながら現実はエルロー辺境伯の思い通りにはならない。


自分の理想と現実には常にギャップがあった」





「それで・・・。欲求不満を満たすために、亜人や獣人を差別して、


子供たちを殺していたのか・・・?」





「まあ、言いたくないが、そんなとこ。


自分より弱い存在をいたぶって殺すことで


自分が優れた存在だと再認識していた。そして、本当の目的は、


子供たちを誘拐し、子供たちの親が子供たちを助けることが


できないってことに、この上ない自分の強さと価値を見出して


喜んでいたのさ。悔しがる親の顔、悲しむ親の顔を想像することで


エクスタシーを感じるクソヤローだったんだよ。


だが、その腐った考え方が結局自分の首を絞める結果となった。」





「モコの村に手を出して、幸太郎の怒りを買ったわけだからな」





「俺は大したことはしていない。エルロー辺境伯は『自滅』だよ。


無条件に自分が優れていると思い込んでいたから、


彼の計画は穴だらけ。おまけに相手が格下と思ったら、


最悪のタイミングで最悪の手を選択してしまう。


根拠もなく自分が強いと思い込んで、


余裕ぶっこいてるうちに逃げることさえできなくなっただけさ。


エルロー辺境伯が商売が上手いと聞いていたけど、


商売が上手かったのは執事の方だったんだろうな、多分。


自分の主を押し上げることで、自分もうまい汁を吸っていたはずだ。


操り人形というわけでなく、お互いがお互いに共依存していたんだろう」










(C)雨男 2022/01/25 ALL RIGHTS RESERVED






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