報酬
幸太郎が作ったスープをジャンジャックとグレゴリオが、ばかすか食っている。
「おおお! これ旨いぜ! 幸太郎が作ったのか?」
「ううむ。いや、これは驚きだ。何というか・・・
うまいという以外に言葉がでないな」
幸太郎は追加で、もうひとつ寸胴鍋を取り出してスープを作った。
どうせ食材はしこたま仕入れてある。
「今度、ご主人様の作る『ウドゥン』を食べて下さい。
とっても美味しいですよ!」
「なにい!? 他にもあんのか!」
子供たちが『マヨネエズ』美味しいとか、
女性陣が『デザート最高でした』とか、口々に言う。
幸太郎はアルカ大森林で、それらを作ることを約束させられた。
(あんなうどんで満足されてもなあ・・・。
香川県人をこの世界に召喚するべきじゃないだろうか・・・。
そう、『種』として・・・)
食事の終わりに、幸太郎は大事なことを思い出した。
「そうだ。ジャンジャック、グレゴリオ殿、実は報酬が出ることになったんだ。
エルロー辺境伯が『心を入れ替えて』賠償金を払ってくれたんだよ。
・・・快く、な。それで、モコを含めた4人で、
一人頭金貨5000枚ずつに均等に分けよう。
ギブルスさんには、もうすでに分けてきたから遠慮なく受け取ってくれ」
ところが、3人とも『いらない』と口を揃えて言った。
「私は髪の毛一本にいたるまで、ご主人様のものです。
モコのものはご主人様の所有するものです。
私も含めて、全てご主人様が自由にする権利があります」
「俺たちは元々『報酬なし』という約束だったしな。幸太郎が使えよ。
まあ、正直に言うと、さすがに金貨を5000枚も持ってると
『マジックボックス』を圧迫してしまう。
もう色々入ってるから、とても入らないぜ。あははは」
「まあ、豪邸にでも住んでない限り、
とてもそんな大金は所持できないさ。
小狼族の村に借りを返すという目的だったから、
正確には幸太郎殿から報酬をもらういわれは無いな。
それに・・・。実は、俺もジャンジャックもそれなりに
金持ちだったりするんだよ。一応、俺たちはB級冒険者だからな」
幸太郎は2人の本名を思い出した。『ジャンジャック・マガーク』と
『グレゴリオ・グラード・ガンドルフ』・・・。
そう、苗字持ちの貴族だった。
多分、貴族の次男とか3男なんだろうが、親が裕福ってことなんだろう。
しかし・・・。ちょっとくらい受け取ってほしい。
なんか独り占めしてるみたいで気持ち悪い。
(C)雨男 2022/01/23 ALL RIGHTS RESERVED




