きらっ
ロバはポックリコ、ポックリコと、のんびり進む。
昼食の準備をしている間、子供たちが水浴びしたいと言いだす。
幸太郎は狸人族の姉妹に子供たちについてもらった。
「何かあったら大きな声で呼んでね。モコは必ず聞こえるから」
モコには周囲の警戒を頼んだ。
幸太郎がスープを作っていると、モコが驚きの報告を持ってくる。
「ジャンジャックさんと、グレゴリオさんが見えます」
ええ? もう追いついてきたの? 幸太郎が目をこらすと、
確かに見える。あの大男は間違いなくグレゴリオ。
「よう! 幸太郎! なんか久しぶりな気がするな!」
「幸太郎殿、作戦は上手くいったようで何より。
・・・いい匂いがするな」
改めて2人を見ると、やはり凄まじく強い印象がある。
ユタの町で見た誰よりも強そうだ。
子供たちが戻ってきたので、全員に紹介。
モコは子供たちの頭を拭いてまわっている。
「こちらの2人はジャンジャックとグレゴリオ。
子供たちは一週間くらい前に会ってるはず。
B級冒険者で、今回子供たちの救出作戦に協力してくれた。
まあ、いわば『共犯者』だな。今回は陽動とかく乱を頼んだ」
ジャンジャックとグレゴリオが挨拶した。
女性陣はジャンジャックに見とれている者もいる。
ワイルドイケメンは、やはり人気者か。
「ジャンジャックは見た目もいいし。何より強いしな。
どこに行っても人気者だよ。
でも、あいつは女にはなびかないんで、逆に女がらみの
トラブルはたまにある」
「グレゴリオ殿・・・。心の中を読まないでいただきたい・・・。
ま、俺のような一般人には縁の無いトラブルだな・・・」
「幸太郎殿にはモコがいるだろう?」
幸太郎は子供たちの相手をしているモコの背中をちらっと見て、
小さく『密室』を発動させた。
「危険な旅には連れていけないよ。あの子には幸せになってほしい」
「そうか・・・。ま、何事にも諦めが肝心な時はあるものさ」
グレゴリオは爽やかに笑った。ここで歯がきらっ。
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