古傷でも治る?
「いいですよ。実は回復魔法はたくさん使えるんです。
何か怪我や病気があったら、ついでに今、治しますよ」
「古傷でも治りますか?」
「うーん。それはまだ試したことないですね・・・。
試させてもらっていいですか?」
「是非、お願いします! お腹です」
狸人族の姉妹はそれぞれ服をぺろっとめくった。
モコが少し不機嫌そうな顔をする。
「め、めくらなくても治せる・・・と思うよ。服を戻して下さい。
では・・・『陽光の癒し』」
幸太郎の手から金色の光がオーロラのように広がる。
女性陣は全員集まってきた。
子供たちも。
「きれい・・・」
「なんて美しい光・・・」
「神秘的な輝き・・・」
幸太郎は少し心配だった。古傷でも治るのだろうか? 治ってほしい。
狸人族の姉妹は、再び服をめくった。
「治ってます! 脇腹の傷・・・。10年以上昔なのに・・・。
なんの跡も残ってない!」
今度はチワが大いばりで言った。
「すごいでしょ! 幸太郎お兄ちゃんの光!
チワもね、もう死んじゃうって大けがだったけど、
全部、ぜーんぶ治してくれたんだよ! えっへん!」
それを見ていた人族の女性4人が、すがるような目で懇願してきた。
「私たちの古傷も治していただけますか? お願いします」
幸太郎はちょっと意外だった。
ブロトの商館からずっと、彼女たちは大人しく、
口数も少なくて、目立たないような行動をしていた。
「もちろんいいですよ。さあ、こちらへ」
すると、4人全員一斉に服を脱いで背中を見せてきた。
「これは・・・なんてひどい・・・」
そこには複数の焼き印、鞭でひどく打たれたであろう、
醜く盛り上がった傷の跡があった。
おそらく背中がつっぱって日常生活でもつらいはずだ。
幸太郎はふつふつと怒りが沸き上がるのを感じていた。
「治します。何十回でも回復魔法をかけ続けます」
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