回復魔法
エルフの女性は『もう一つだけ聞きたいの』と幸太郎に質問した。
「もし、柵の隙間とかから弓で撃たれたりしたら、
どうするつもりだったの?」
「ああ、それは心配だったよ。首輪をしている限り、
君たちが撃たれることはないと思っていたけど。
俺は遠慮なしに撃たれる可能性があった。
でもバクチじゃないんだよ。
実は、回復魔法が使えるんだ。それも、かなり強力なやつが」
皮肉なことではあるが、幸太郎は『陽光の癒し』の真の力を知った。
チワが拷問を受けた時、何本かの釘は腹部に打たれていた。
おそらく肝臓など、即死はしないが致命傷といった傷が
何か所かあったはずだ。
しかし、『陽光の癒し』は一切お構いなしに全て『治した』・・・。
つまり、致命傷すら絶命していない限り『復元』してしまう。
この魔法の力はまさに一桁違った。
もちろん、本当なら使える回数に限りがあり、
何でも治せるわけではないのだろうが、
幸太郎は『太陽神の加護』で無限に使える。完全にチート級だ。
だが、幸太郎はこの事件がなければ『陽光の癒し』の
真価は知らないままだっただろう。
「もし、弓を撃たれたら、しばらく痛がって様子を見たよ。
人間は『勝った』と思った瞬間が一番無防備になるからね。
伏兵がいれば、遠慮なく呼んだだろう。
追手でも、ここぞとばかりに勝ち誇って正体を名乗っただろうさ」
「うわー・・・。えげつないですね・・・。
自分が囮で、しかも大けがする前提の作戦立てていたなんて・・・」
「人間は『勝った』『終わった』と思った瞬間が
一番油断するようにできてる生き物なんだよ」
エルフの女性はドン引きした顔で溜息をついた。
「幸太郎さんと盗賊では役者が違いすぎるわね・・・。
盗賊全員、あの世で後悔してるわよ、きっと・・・」
狸人族の姉妹も話に入ってきた。
「その回復魔法って、見せてもらっていいですか?」
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