利口な奴?
ちょっとだけ顔を出した盗賊は、見張りなのだろう。
幸太郎とモコ、女性陣は両手を挙げて『降参』ポーズを見せた。
薄暗くてよく見えないが、見張りは驚いたようだ。
そして一度引っ込むと、今度は大勢が姿を見せた。
11人いる! そして誰かがポカっと殴られていた。
見張りがバレていたのが怒られたのだろう。
幸太郎は一応『鑑定』した。ジョブは盗賊で間違いない。
「じゃあ、全員死んでも問題ないな。お気の毒に」
盗賊たちは、少しだけ何やら話をしていたようだが、
全員がゆっくりと丘を下って幸太郎たちのほうへやってきた。
ニヤニヤした顔の盗賊たちは柵の近くまで接近してきた。
かがんで隙間から幸太郎たちを見る。
『うひょー! 上玉ぞろいだぜ』という声が聞こえる。
お前らそればっかだな。
幸太郎は早速ひざをついて顔が見えるようにしてから、
情けない声をあげた。
「た、助けてください! 見逃してください!
お、お金なら差し上げます!」
盗賊たちの中でも一回り大柄な男が前へ出てきた。
「最初から降伏とは、なかなかお利口さんじゃねえか。
俺たちもあまり手荒なことはしたくねえ。
俺たちも好きでこんなことやってるわけじゃねえんだ」 嘘つけ
「ど、どうぞ! この袋に金貨が15枚入っています。
これで見逃してください!」
幸太郎は金貨の入った袋を柵の上から投げた。
袋を拾った盗賊が中身を確かめる。
「お頭! 金貨は確かに15枚ありますぜ」
「おお、ありがとよ! だが・・・。足りねえなあ?
お前・・・そんなに美女を引き連れて・・・
うらやましいじゃねぇか。ちょっと俺たちにもいい思いさせてくれよ」
「ええ? そ、そんな・・・。
こいつらは依頼で連れているだけで・・・。そ、そうだ、
もっとお金を出しますから、見逃してください!
お、おい、馬車の中の金貨をこの人たちに渡すんだ!」
モコが馬車の中に用意してあった袋を外へ投げる。
今度は盗賊が直接受け取った。
「お頭! 今度は20枚入ってます」
「おお、お前なかなか話がわかるじゃねえか。
俺は利口なやつは好きだぜ?
・・・だが、やっぱり足りねえな。どうやら、この行商隊の男は
お前だけのようだな。護衛もなしに不用心な奴だ。
いいから、女と馬車の中の子供を置いていけ」
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