真相(うっそぴょーん) 4
「じゃから、本来ならば、村人が気軽に雇える男ではないそうじゃ。
しかし、今回は辺境伯を殺しに来ておる・・・。
そのネクロマンサーは時々、タダ同然で依頼を受けるそうじゃ。
おそらく、子供たちを拷問して殺す辺境伯に対して、怒ったのじゃろう。
影に生き、闇に滅する定めの身であれど・・・
闇より黒き悪は許さないのじゃろう・・・」
(持ち上げすぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!) 幸太郎は赤面した。
「すごい男なんですね・・・。ちょっとカッコいいかも・・・」
「ああ、ブロトを襲ったほうはともかく、
辺境伯を襲ったほうのネクロマンサーは
追わないほうがいいじゃろう。あのお方も一目置いておる。
特に今回は明らかに子供たちを奪われた親たちの
『正当防衛』と言ってもいいからのう」
「そうですね・・・。俺も正直、辺境伯は死んで
当然だったんじゃないかと思います」
「おやおや、誰かに聞かれたら大変じゃぞ?」
「これはここだけの話なんでしょ? 誰にも話さないという約束の」
「ひっひ。そうじゃったのう。では、今までの話が嘘でない証拠を
見せてやろうかの。馬車の中を見てみるがいい。まあ、そっと、な。
子供たちが騒ぐと誰かに見つかるかもしれん」
ギブルスは馬車の後ろの幌をそっとめくって、中を見せた。
馬車の中には子供たちと女性陣が俯いて座っていた。
「本当に子供たちが・・・。それと、ギブルスさん、
今女性がたくさん乗っていましたけど、あれは?」
「あれはブロトの商館から逃げ出した奴隷たちじゃ。
わしの貴金属の店はブロトの商館から近いんじゃよ。
それで昨夜、金を持って逃げる奴隷たちが見えたもんでの。
『金の匂いがする』と商館へ行ってみたら、門の側で
おろおろしながら固まっておるこの女性たちがおったんじゃ。
アル、主人がいなくなった奴隷は誰のものじゃ?」
「それは・・・発見した人が所有者に・・・」
「その通り! かくて、この奴隷たちは
わしのものってことよ。くっくっく」
「ちゃっかりしてますね・・・ギブルスさん・・・」
(C)雨男 2022/01/09 ALL RIGHTS RESERVED




