真相(うっそぴょーん) 3
「そうじゃよ。これは王国にとって死活問題なのじゃ。
・・・実は今も、あのお方が近くでわしらの様子を見ておる。
もし、お前さんに裏切る気配があれば・・・即座に斬るつもりなのじゃろう」
「え? え?! ど、どこですか?」
「キョロキョロするな。姿は見えんじゃろうが、視線は感じるじゃろう?
わからんのか? ・・・お前さんはまだまだ修行が足りんのう。ひっひ」
「これから精進します・・・。あ、そうだ、
でも、ブロトさんを襲ったのはいつだったんですか?
子供たちの救出はできたのに、何故ブロトさんを襲ったのでしょう?」
「おお、それがあったのう。実はな・・・。ひっひ。
昨日はネクロマンサーは2組おったんじゃよ。
エルロー辺境伯を襲って子供たちを救出に来た奴らと、もう1人、
ブロトの商館へ誰かを探しに来たネクロマンサー・・・。
2人のネクロマンサーがおったんじゃ」
「2人? じゃあ、あれは完全に別々の事件だったんですか?」
「そうじゃ。エルロー辺境伯を襲う話を、
もう1人のネクロマンサーが聞きつけた。
それで便乗したんじゃろう。辺境伯を襲ったほうも
『陽動の代わりになるだろ』くらいの
つもりで許可したんじゃろうのう。結果は知っての通り、
捜査は大混乱じゃ」
「では・・・。『子供の救出が目的』のネクロマンサーと、
『誰かを探しに来た』ネクロマンサー・・・。
2人が起こした、2つの事件だったんですか・・・」
「それを1人の事件として扱ったら・・・混乱するのは無理もないのう。
何しろ『どちらが先か』ではなく、『同時、平行して起きた事件』
なのじゃからな。どう考えてもつじつまなど合うわけがないわい。
あのお方から聞いたんじゃが、辺境伯を襲ったほうは大物らしい。
普段は高額で仕事を請け負い、邪魔する者は容赦なく殺す、
血も涙もない恐ろしい男だそうじゃ」
(血も涙もあるわい!)幸太郎は横で聞いてて渋い顔になった。
(C)雨男 2022/01/08 ALL RIGHTS RESERVED




