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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーVSエルロー辺境伯 4
333/1070

わしの負けじゃな


 ギブルスのこんな顔は今まで見たことがない。



ギブルスは3秒ほども固まったまま動かなかった。



いや、動けなかったのだろう。








この指輪は、昨夜エルロー辺境伯の金庫室で吸い込んだ宝物のひとつだった。








この指輪は豪華な造りではない。むしろ質素と言っていい。



銀をつかった台座にバラの紋章が入っているだけ。宝石も無い。



だが、この指輪はエルロー辺境伯の金庫室の机の上で丁寧に飾られていた。



もっと豪華な指輪もある中で、破格の扱いといっていいほどだった。








幸太郎は、その指輪を吸い込む前に『鑑定』してみた。








『バラの証の指輪 : ローゼンラント王国の王妃が代々身に着けていた指輪』








(この指輪は・・・)





幸太郎はこの指輪の真の所有者に心当たりがあった。



この指輪はその人以外が持っていていいものではない。





(まずは、ギブルスさんに渡すべきだろう・・・)





幸太郎はとりあえず預かることにした。








「ギブルスさん。その指輪が気に入りましたか? 


ではこれらの美術品や金貨などとセットで、


馬車などの代金としてお渡しします」





幸太郎はニコッとほほ笑んだ。



ギブルスはさらに指輪を眺めていたが、



少し溜息をつくと幸太郎に顔を向けた。





「ふっふ、どうやらわしの負けじゃな。


では、これらはありがたくもらっておこうかの。


馬車などの代金としては、ちと多すぎるが・・・


他に選択肢は無いようじゃ」





ギブルスは丁寧にハンカチに指輪を包むとポケットに入れた。








代金の精算は終わった。いよいよ堂々と門をくぐると時がきた。










(C)雨男 2022/01/04 ALL RIGHTS RESERVED






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