味方?
一方、こちらは辺境伯の屋敷から退出した隊長とその部下一名。
昨夜からの徹夜で疲労した体に鞭打って、とぼとぼと歩いていた。
「隊長、開門の許可があっさりもらえて良かったですね」
「ああ・・・。どのみち、もう商人ギルドと冒険者ギルドの
圧力には耐えられん・・・。俺たちだって、飲まず食わずで
動けるわけじゃないからな。物資は必要だよ・・・。
交易を再開させたいって意見は正論だ。その護衛などにあたる
冒険者も必要だ・・・。俺たち警備隊が付いて回るわけには
いかないんだからな・・・」
「ファルネーゼ様が『犯人を見つけ出すまで門を開けるな!』
なんて言い出さなくて良かったですよ、ほんと。
理解のあるお方ですね、ファルネーゼ様は」
「まあ・・・。夫である辺境伯には何の愛着もないんだろうな。
お前気が付いていたか? ファルネーゼ様の後ろにいたメイド長。
あの人は『奥様』でなく『ファルネーゼ様』って呼んでいたろ?
多分、ファルネーゼ様が『奥様って呼ぶな』って命じたんだろう。
やっぱり辺境伯の残虐な行いにはうんざりしてたんだろーよ。
ありゃ元の侯爵家に戻るつもりかもしれんな」
「あ、そういえば・・・確かに。でも気持ちはわかりますね。
公にはできませんが、『黒い噂』が事実だったってわかったら、
私だって気持ち悪いですよ・・・。とても辺境伯の味方を
続ける気にはなりません。・・・おっと、失言です」
隊長はふと立ち止まった。
「・・・。『味方』・・・『味方』か・・・。そうだ・・・。
なんかファルネーゼ様は犯人に・・・、
ネクロマンサーの味方をしているような感じがした・・・。
もしかしたら、昨日の襲撃の際に何か話をして、
ネクロマンサーに好感を持ったのかもしれんな・・・。
ファルネーゼ様は犯人について何か知っているのかもしれない・・・」
「私たちの知らない、何か別の情報を持っているって
ことですか・・・? でしたら、冒険者ギルドからもう一度
『魅了』を持っている奴を借りてきて・・・
むぐうっ!」
隊長は青い顔をして、あわてて部下の口を手でふさいだ。
青い顔のままキョロキョロしている。
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