開門の許可を
少し時間はさかのぼる。
ファルネーゼの下に、町の警備隊の隊長と部下一名が相談に来ていた。
町の警備隊はコムノー辺境伯の頃と同じなので、
エルロー辺境伯の部下とも言えるし、
また、指揮権的にはエルロー辺境伯から独立してるとも言えた。
「この度は・・・。我々の力が至らず、辺境伯様を
お守りすることができませんでした、まことに申し訳・・・」
「お気持ちだけ頂いておきます。それより、通り一遍の挨拶は不要です。
あなた方がここへ来たのは、何か相談があってのことでしょう?」
「い、いえ、我々は己のふがいなさを、お詫びいたしたく・・・」
「よいのです。これはあなた方の過失とばかりは言えないでしょう。
警護が全滅するほどの相手です。むしろ、あなた方まで
全滅しなくて安堵しております。
それに、我が夫のことではありますが、原因はやはり
『自業自得』と言わねばならないでしょう。
ついに天罰が下った・・・というより、いつかは
『手を出してはならない相手』に触れてしまうだろう・・・。
そう思っておりました。夫の部下の騎士たちも、あなた方も、
責任を取る必要はありません。全ての責任は夫にあります」
「・・・。ありがたいお言葉・・・」
「それで、本当の用件はなんですか?
あなた方は随分と悩んでいるように見えますが」
ここで後ろに控えていたイネスがそっと助け舟を出した。
「ファルネーゼ様。おそらく、門を開ける許可を頂きに来たのでしょう」
「なるほど、門ですか・・・。現在は北門以外は
封鎖していると聞いています。
しかし、商人ギルドは『早く開けろ』と圧力をかけてくる。
それで判断に困ったあなた方が私に許可をもらいにきた。
・・・こんなところでしょうか?」
「は・・・。いえ、その・・・。決して圧力に屈するわけではなく・・・。
我々は犯人の捜索に全力を・・・」
ファルネーゼは隊長の言葉を遮り、きっぱり言い切った。
「許可します。今すぐ全ての門を開放してください。
そして、通常の運営を」
(C)雨男 2021/12/31 ALL RIGHTS RESERVED




