デザート
幸太郎は、モコにデザートを作ってもらっていた。
マヨネーズを作るときに卵白が大量に余る。
それに牛乳と砂糖を入れて混ぜる。
少し小麦粉を入れて、隠し味に塩をちょっと。
それを延々とかき混ぜてもらっていた。
さらに、大量に買ってきた果物の皮を剥いて、小さく切る。
それを器に盛って、さっきのクリーム状になった卵白をかける。
幸太郎は、子供たちに甘いものを食べれるようになって欲しくて、
これを考案した。気にいってもらえるだろうか?
幸太郎は火にかけた寸胴鍋をかき混ぜた。
こっちは鶏ガラと干した小魚で出汁をとっている最中だ。
醬油か味噌が欲しいが仕方ない。
ちゃんこ鍋うどんみたいになってしまうが、
これこそ『うどんに貴賎なし』だろう。
モコは手を止めて、少し下がる。そしてそっと深呼吸をした。
今、ここには幸太郎とモコしかいない。
子供たちも女性陣も別の部屋だ。ギブルスは出かけている。
『・・・これはチャンス・・・』
鍋をかき混ぜる幸太郎の背中へ向かって、思い切って声をかける。
「ご主人様は・・・、元の世界で奥様や恋人はいたのですか・・・?」
「俺? いいや、生涯独身で、恋人もいなかったよ。
全然、女性にはモテなかったなあ」
「そ・・・、そうなんですか? ご主人様がモテなかったなんて、
信じられません。あちらの世界の女性の好みって、変ですね・・・」
「変なのは俺のほうだろう・・・。見た目も大して良くないし、
金持ちでもない。他の男と比べたら、そりゃあ
『なんでお前と付き合わなければならないんだ』って思うさ。
選択する優先順位でいけば、下から数えたほうが早いのは間違いない」
「そんな・・・。見た目のカッコよさや、
お金持ちかどうかだけが判断基準なんですか?」
(C)雨男 2021/12/30 ALL RIGHTS RESERVED




