夕方まで待とう
「じゃあ、俺たちは『ホーンズ山脈群』に化石ってやつを
探しに行く準備を始めようか」
「そうだな。先日のレッド・サーペントの肝を取りに行くときに、
途中で石になった貝殻を見た覚えがある。あれが化石のようだ。
あの近辺を探してみよう」
ジャンジャックとグレゴリオは立ち上がった。
「ま、待ってくれ! せめて警備の巡回計画ができたら
見てほしいんだ!」
「ええ? 警備隊の仕事だし、俺たちが口出ししていいものじゃねーだろ」
「頼む! 今夜に備えるってことさえ、俺たちは頭が回らないほど
混乱しているんだ! 誰かに冷静な目で見てもらいたいんだよ!
これ以上失態を重ねるわけにはいかないんだ!」
「いや、しかしな・・・。俺たちにも予定が・・・」
「まあ、待て、ジャンジャック。警備隊の苦悩もよくわかる。
昨夜はネクロマンサーに最初から最後まで
やられっぱなしだったわけだしな。結果論だが、後手に回った。
しかし、今夜はそういうわけにいかん。
可能な限り手を打ちたいのだろう。
だが、警備隊は全員徹夜でクタクタだ。これでは頭が働かない。
どうだろう、ジャンジャック。
せめて夕方の門が閉鎖される直前まで待ってやろうじゃないか。
俺たちなら、それぐらいの遅れは取り戻せるさ」
「ん~・・・。ま、いいか。わかったよ。
と、言うわけで俺たちは夕方まで宿にいるから、
そっちに来てくれ。あんたらは、まず寝るんだぞ?」
「感謝するよ! さっそく上に報告して、
一部を残して寝るように進言する。俺も冒険者ギルドに
話を通したら寝ることにする。夕方までには警備計画を
まとめて持っていくから、その時アドバイスを頼むよ」
ジャンジャックとグレゴリオは警備隊の詰め所を出た。
「だいたい予定通りだな?」
「ふふ、お前は本当に演技が上手いな」
「ゴリオだって、ノリノリだったじゃねーか」
2人で笑った。
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