恥になる
「辺境伯のメイドが言うには、犯人は仮面を着けた人族と、
獣人の女の子らしい。そして、獣人の子供たちを
辺境伯から奪い返しに来たようだ」
「げ。じゃあ、あの辺境伯が亜人の子供を拷問して殺してるって噂は・・・」
「み・・・認めたくないが、本当だ。絶対に口外するなよ?
このことが周辺国にバレたら、バルド王国の貴族は
末代まで消えない恥を背負ってしまう・・・」
「そんなに恥なら、最初から誰か止めろよ・・・」
「うう、もっともな話だが、国にも色々事情があるのだろう。
正直、俺も辺境伯が死んでほっとしている。
コムノー辺境伯はこんなこと無かったからな。
あああ、いや、これは絶対に言うなよ! な? な?」
「はあ・・・まあ、いいよ。どうせ俺たちゃ流れ者の冒険者だ。
国の貴族のメンツなんざ、銅貨1枚にもなりゃしない」
「助かる。いや、ほんとに頼むぞ。あ。そうだ、それでな。
メイドたちが言うには、確かに黒フードは子供たちを連れて
出て行ったそうだ」
グレゴリオが眉を寄せて怪訝な顔をした。
「ほう? しかし、俺はジャンジャックと黒フードがやり合うのを見たが、
黒フードがもう1人いる以外は・・・全く誰もいなかったぞ?
子供たちなど1人も見なかったが・・・」
「そうだな・・・。俺がやり合ったのは、確かに男だった。
もう1人の黒フードが女の子かどうかは、暗すぎてわからなかったが・・・。
確かに黒フード2人だけだったな。その子供たちは
他の道を通ったんじゃ・・・。いや、川があるか」
「子供たちは見なかったんだな? 確かだな?
うう~む、今ジャンジャックが言った通り、
ピートス川は河口が近いから、川幅も水深もかなりある。
カーレに向かうには橋を渡るか、船を出すしかないが・・・。
夜の暗さで船を使うのは危険が大きいな」
「いや、そもそも船では軽装備の警備兵に橋で追い越されるぜ?
闇にまぎれるなら橋を渡ってからにしないと、走ってきた意味がない」
「そうだな・・・。せっかく防壁を越えて警備兵を引き離したのに、
追いつかれてしまうな・・・。夜の海へ下るのは危険が大きいし、
船のセンはないか・・・。
すると・・・子供たちは黒フードと一緒ではなかった、ということか」
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