そうだ、死んだんだ
幸太郎は意識がハッキリしてきた。
そして不思議に思った。夢にしてはやたらリアルだな、と。
「うーん。まあ夢なのは間違いない。痛いのに目が覚めないのは
不思議だが・・・」
「夢じゃないわよ?」
「うおう! 受け答えまでリアル・・・。
しかし、こんな美人見覚えがないなあ・・・」
「あら美人だなんて正直ね!」
「でも、ちょっと品がないなあ・・・」
幸太郎は再びアイアンクローを顔に受けた。
「品がなくて悪かったわねえ・・・」めきめきめき
「あいいいいいいいいいいっ!!! 痛い痛い痛い!!!」なんて力だ
幸太郎は涙目になってちゃぶ台に沈んだ。
「そろそろ目を覚ましなさい。あんた死んだでしょ?」
幸太郎は事故にあったことを思い出した。
「そうだ! 俺は事故に・・・じゃあここは病院で見てる夢なんだな!
助かったのか・・・。あ。そうだ。午後の配達いかないと・・・。
まずはお客さんに遅れるって電話だな」
「あーもう・・・。しょうがない、幸太郎、ちょっとこれ見なさい」
アステラが指をふいっと回すと空間に四角い穴が開いた。
そこには幸太郎の事故現場が見えた。
血だらけで倒れている幸太郎。そばで号泣している女の子。救急車がやってくる。
救急隊員が小さく首を振る・・・。
見ればわかった。倒れている幸太郎の傷は、本人が見ても
到底助かる傷には見えないのだ。
「あ・・・。 おれ・・・。思い出した・・・。致命傷・・・」
「目が覚めたようね。では、改めて。あたしは太陽神 アステラ」
そして、この一言を幸太郎に告げた。
「ようこそ、異世界へ」
(C)雨男 2021/10/30 ALL RIGHTS RESERVED