いただきます
幸太郎は食事の前に、全員に大まかな状況を説明した。
解放した奴隷の人たちから驚きの声があがった。
「ほ、本当にエルロー辺境伯を倒したのですか・・・?」
「相手は大貴族ですよ・・・?
警護だって並みの数ではないはず・・・」
幸太郎はうなずいた。
「エルロー辺境伯とブロトは人狩りを使ってモコの村にケンカを売った。
モコの村は俺を雇って反撃した。エルロー辺境伯とブロトは
完全に相手をなめていただけです。ただ、それだけ。
根拠もなく、自分たちが食われる側に回るわけがないと思っていただけですよ。
そして、今回ついに自分たちより強い相手に手を出して返り討ちにあったのです」
「でも・・・確かに、子供たちは救出されて、ここにいますから・・・。
嘘は言ってないのですね・・・。で、でも、それだと
追手がかかるのではありませんか・・・?」
「もちろんかかります。でも大丈夫。ちゃんと明日の昼に
町を出れますよ。のんびりとね。『アルカ大森林』を目指します。
途中で皆さんの首輪は破壊するから、
その先は一応自由行動オーケー。ついてくるも良し、
町へ戻って報告するも良し。好きにしていいですよ」
元奴隷の人たちは青ざめて首を振る。
「ま、町に戻るなんて、とんでもない! ついてゆきます!
こんな大事件に関わっていると知られたら、
どんな目に合うかわかりません!」
「はい。では、みんなで『アルカ大森林』を目指すとしましょう。
明日の正午近くまでは特にすることはありませんから、
外出以外は自由にしてていいですよ。
・・・では食事にしましょう! いい匂いだなあ」
幸太郎は合掌した。『いただきます』
見ていたチワが真似をした。ぺたんと手を合わせる。
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