夕食だ!
「それにしても、お前さんは不思議な男じゃの」
例え、奴隷を開放したところで、帰る場所の無い奴隷が大半だという。
お金をもらって自分勝手にしたいのは『奴隷落ちした犯罪者』だけ。
「子供たちの場所を言い当てたり、様々なトラップを仕掛けたり、
化石の知識を持っとるくせに、奴隷については
全然知識を持ってなかったり・・・。お前さんの知識は妙な偏りがあるの。
ひっひ。面白い、面白い」
「まあ、その辺も含めてそのうち全部説明しますよ・・・」
幸太郎はあんまり説明したくはなかったが、随分借りができてしまった。
ある程度は説明しないとならないだろう。
しかし、それはここではできない。
まだ、町を脱出する部分が残っているからだ。まだ終わっていない。
気を抜くには早すぎる。
ギブルスが幸太郎たちを大きな部屋に案内する。
ここは幸太郎が檄を飛ばした部屋だ。
大き目のテーブル3つがつなげられて、
椅子が20脚、用意してあった。
「はは・・・ギブルスさんは本当に開放した奴隷が
6名以上ついてくるとわかっていたんですね。参りました・・・」
ガーラとタマンがスープの入ったずん胴鍋を2つ、
山盛りの大皿のソーセージ、同じくパンを運んできた。
幸太郎はギブルスの気遣いに舌を巻いた。
子供たちはショックで食欲がないかもしれない。
だから『食べたい分だけ取れる』ような形式にしたのだ。
これなら食べたい子供は、他の子に気兼ねなく食べられる。
幸太郎はギブルスがなぜ、いくつもの店を経営しているのか、
少しわかった気がした。
「よし、幸太郎。お前さんは子供たちと一緒に夕食を食べていてくれ。
わしはちょっと出かけてくる」
「へ? どこへ行かれるのですか?」
「商売じゃよ。大通りでは大騒ぎ。
色々壊れたり必要な物がでているじゃろうて。
まあ、ついでに見物とジャンジャックたちの様子も見てくるわい」
ギブルスは大福帳を何冊かぶら下げて、
ガーラとタマンに荷車をひかせて出て行った。
「なんてちゃっかりした爺さんだ・・・」
幸太郎たちは唖然とした。
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