チワちゃん
時間は幸太郎とモコがギブルスの屋敷へ戻ってきた時に戻る。
部屋に入ると子供たちが走り寄ってきた。幸太郎は一応『密室』をかけておく。
「モコねーちゃん! お帰り!」
男の子たちだ。
「モコおねーちゃん! お帰りなさい!」
女の子たちだ。みんなモコに集まってくる。
・・・が、1人だけ違う子がいた。
「幸太郎おにーちゃん! お帰りなさい」
その女の子は幸太郎に飛びついた。幸太郎は慌ててだっこする。
「た、ただいま・・・。どうして俺の名前を?」
「うん、ギブルスさんに教えてもらったの。あ。
あたしはチワだよ!」
チワは幸太郎に頬ずりする。モコの表情が少しこわばった。
幸太郎は思い出した。そうだ、この子は拷問を受けていた女の子だ。
そして、『まずいな』と思った。
「ご、『ご主人様』。ずいぶんチワちゃんに懐かれたようですね・・・」
「ははは、あんまりカッコよくなかったけど、一応ヒーローなのかな?」
「うん。幸太郎お兄ちゃんはチワのヒーローなんだよ!」
チワが幸太郎に『ぎゅっ』と抱き着いた。
モコの顔が微妙な笑顔で固まった。
「もう・・・チワちゃんは甘えんぼさんだな。よしよし」
チワのふさふさした小さなしっぽが
『もさこら、もさこら』と揺れている。かわいい。
「お帰り、幸太郎。ひっひ。一通り予定は済んだかの?」
「ギブルスさん。この度はお力添え、ありがとうございました。
それで・・・その。実は・・・。
解放した奴隷が予定より、その・・・」
「ほっほ。8人もキレイどころを連れて戻るとは、やるのう!
しかも男はゼロか。ひっひ。お前さんも好きじゃの。
ハーレムまっしぐらじゃな」
「ち、違いますって。完全に読み違いです・・・。
えー。それで、馬車に8名乗れるでしょうか・・・?」
「ああ、問題ないわい。言ったじゃろう?
『大きめにしておいた』ってな。
わしは6名以上に増えると読んでおったわ。ひっひ。
まさか女ばかりとは思わんかったがの。くっくっく」
ギブルスは心底面白いといった風で幸太郎をからかう。
「むぐぐ・・・」
でも全員乗れる大きさの馬車があって良かった。
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