怪しい!
「ああ、実は町でちょっとした騒ぎがあってな」
「騒ぎ? そういや、なんだか歓声があがったようだったが?」
「歓声ではないわ。お前らは聞いてないのか?」
「いや? 俺とゴリオは夕方からずっとここで釣りをしてたからなあ」
「ふーん。夕方からか、一応、外出許可証見せてもらっていいか?」
「おう。ほれ、許可証。・・・ついでにギルドカード・・・だろ?」
ジャンジャックとグレゴリオは許可証とギルドカードを取り出した。
グレゴリオは内心ほっとしていた。
(やれやれ、やっと、こちらに疑いの目を向けてきたか・・・。
騎馬隊が来ないのかとちょっと心配したよ・・・。
さっきの軽装備の兵が戻ってくるのを待つのは、
あまりにも不自然だからな)
「確かに夕方に門を出ているようだな。・・・釣れたか?」
「ああ、まあまあ釣れてるぜ。大きいのは大体俺が釣って、
小さいのはゴリオだな。ま、腕の差ってやつよ」
「俺は食うほうが得意なんでな。おいしいとこだけ頂くさ」
騎馬隊の隊長は魚籠の中を見せてもらった。
確かに大小合わせて30匹くらい入っている。
種類もバラバラ。ほとんどの魚はビチビチ跳ねて生きが良い。
(うーん、確かに釣りをしていたようだな・・・。
いや、誰か、代わりの者を雇って、そいつに釣りをさせて・・・
だめか、ジャンジャックも目立つ奴だが、
グレゴリオはさらに目立つ・・・。門の前の行商や旅行者に聞けば、
目撃証言は簡単に取れるだろう・・・。外出許可証も偽造ではなさそうだ、
当番の番兵の証言もすぐに取れるだろう。黒フードと接触してるから、
グルかと思ったがこいつらは『シロ』・・・か?
いや、状況からすればこいつらが犯人の可能性が一番しっくりくる!)
騎馬隊の隊長はにこやかに話を続けた。
「ふふ、いいな。うまそうだ。俺もこんな状況でなければ、
一匹分けてもらいたい所だがな。
あいにく大騒ぎでそうも言っておれんのだ」
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