逃げるのが最良
幸太郎たちは一階へ降りた。一番奥の金庫室へ行ってみた。
すでに逃げ出した奴隷は一人も残っていない。
まあ、『マジックボックス』でも持っていない限り、
持てる量には限界がある。
案の定、金庫室には銀貨が散乱しているだけで、
銅貨には全く誰も手を付けていない。
「部屋の中のものを全て吸い込め『マジックボックス』!」
幸太郎は備品庫にも行ってみる。こちらはほとんど荒らされていない。
『服を変えよう』と思った奴隷は1人か2人だったらしい。
みな、お金のことだけで頭が一杯だったようだ。
幸太郎は服や靴、シーツやタオルを頂いた。
幸太郎は奴隷だった8名の女性に少しだけ説明した。
「着替えるのは、ユタを脱出した後になります。
脱出したら好きな服を取って下さい」
ブロトたちに『成仏』をかけて回っているときに、
幸太郎はエリックがいないことがちょっと気になった。
「エリックは・・・待ち伏せに参加しているのか・・・」
「優秀そうでしたから、当然ではないですか?」
「・・・。いや、おそらくエリックは罠に気が付いている。
今夜の襲撃を察知してあえて待ち伏せに参加したんだ。
いなくて良かったのか、悪かったのか・・・」
「ええ? 辺境伯を襲撃することに気が付いていたっていうんですか?
それはいくらなんでも・・・。小狼族が大貴族を相手に
襲撃するなんて、考えるでしょうか? 普通に考えて無茶すぎます」
「だからエリックは町を出る選択をしたのだろうさ。俺ならそうする。
襲撃を決定事項とした場合、それを実行するだけの戦力なり、
手段なりがあると判断せざるを得ない。
しかし、その戦力が何かわからないから対策が打てない。
自身の安全を考えるなら『逃げる』のが最良だ」
(C)雨男 2021/12/17 ALL RIGHTS RESERVED




